検索
ニュース

不足から一転して過剰在庫に悩む半導体市場、最悪シナリオでは回復は2026年?組み込み開発ニュース(1/2 ページ)

コアスタッフは、半導体/電子部品市場の現状と今後の展望について説明会を開催した。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 コアスタッフは2023年7月5日、半導体/電子部品市場の現状と今後の展望について説明会を開催。一部製品を除いて品不足感は解消が進んでいる他、全般的に余剰在庫が増えている現状について紹介した。

全体的にはモノ不足は解消も、電源モジュールやパワー系は不足

 コアスタッフは半導体や電子部品のオンライン販売を行う「CoreStaff ONLINE」を展開する2000年創業の企業である。会員数は約9万2000人で販売社数は約7000社となっている。自社在庫販売に加えて、顧客企業の余剰在庫の受託販売などを請け負う余剰在庫削減サービスなども展開している。その他、緊急調達の代行サービスなども行っている。こうしたビジネスを展開していることから、コアスタッフでは、半導体や電子部品の市場動向を詳細にリアルタイムで把握できる立場にある。

photo
コアスタッフ 代表取締役社長の戸澤正紀氏

 こうした立場を踏まえた半導体/電子部品業界の現状について「全体的には不足は解消してきている」とコアスタッフ 代表取締役社長の戸澤正紀氏は語る。コロナ禍以降、サプライチェーンの混乱により半導体/電子部品製品では、極度の製品不足に陥り、納期遅れや調達費の高騰などが続いていたが、逼迫(ひっぱく)局面は一段落したといえそうだ。

 ただ、一部の製品では長納期となっているものも残っている。戸澤氏は「品目で一概に不足しているというのが言えない状況だ。メーカーによっては問題ないところもあれば、特定機種では問題が残っているところもある。あえて言えば、電源モジュールはほとんどのメーカーが約1年の納期を設定しており納期は短くなっていない。また、パワー系デバイスも全体的に納期が長いままである傾向だ」と状況について語っている。

 コアスタッフの顧客が多い半導体製造装置を含む産業機械の需要については2023年3〜5月が底で6月頃から回復傾向が見えてきたという。「PCなどに関連するメモリや電源などは早くからスローダウンし、コロナ禍での需要先食いにより調整期間も長くなる見込みだ。一方で、産業機械領域についても当初は2023年7月頃には本格回復するという見込みだったが、それはごく一部にとどまりそうだ。ただ回復傾向は出ているので、7〜9月を反転時期とし、10月頃には本格回復となるのではないか」と戸澤氏は見通しを語る。

最悪のシナリオは「2026年まで半導体市場の正常化が進まない」

 一方、今後の半導体市場の見通しについては、楽観的なものから悲観的なものまで4つのシナリオが考えられるという。「現状を見ると、半導体市場は在庫が余って製品が売れない“緩んだ”状態になっている。この余剰在庫の解消が進み、市場が正常なバランスの取れた状態に戻る時期はさまざまな要因によって変わってくる」と戸澤氏は述べる。

 1つ目のシナリオは、在庫調整が早期に終了し2023年夏〜秋には市場が正常化するというものだが「これは最も楽観的なものだ」(戸澤氏)としている。2つ目のシナリオは在庫調整が長期化し2023年後半まで調整局面が長引くというものだ。2023年冬〜2024年秋に市場が正常化する見通しを示す。「早く在庫調整が進むことを望んでいるが、2つ目のシナリオである2024年1〜3月あたりに市場が正常化するというのが最も堅実な見通しではないか」と戸澤氏は語る。

 さらに、3つ目のシナリオが市場の回復が2025年以降になるというものだ。これは2024年から現在建設中の新工場や新ラインが稼働し始め、一気に半導体の生産能力が増えるため、市場に製品在庫がだぶつく可能性を懸念したものだ。「市場の需要は回復しても生産キャパシティーが増えるために結果として余剰在庫が解消されない状態が続くという見方だ」(戸澤氏)。

 そして最悪のシナリオが回復が2026年以降になるというものだ。新設工場による生産能力増加に加え、設備投資需要が回復しないということを想定したもので、その場合、市場は低調なままなのに生産キャパシティーだけが高まり、需要を供給が上回り続ける状態が続くことになる。戸澤氏は「デバイスを使用する設備投資需要が継続するかがポイントだ」と述べている。

photo
半導体需要今後の4つのシナリオ[クリックで拡大] 出所:コアスタッフ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る