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「取りあえずボルトで固定」は禁物 締結部設計で押さえるべき基本若手エンジニアのための機械設計入門(19)(2/2 ページ)

3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、機械要素に関するアナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第19回は、ボルトを中心とする締結要素を取り上げ、締め付けによって生じる軸力や摩擦力、部品選定、工具スペースなど、締結部を設計する際の基本的な考え方を説明する。

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六角穴付きボルトの利点と工具スペースの落とし穴

 ここで、機械装置や治具、金型などでよく使われる六角穴付きボルトにも触れておきたいと思います。

 六角穴付きボルトは、頭部に六角穴を持ち、六角レンチで締め付けるボルトです。一般に「キャップボルト」と呼ばれることもあります。

 六角穴付きボルトは、六角ボルトに比べて頭部の外径が小さく、狭い場所にも配置しやすいという特徴があります。また、六角レンチを上方向から差し込んで締め付けられるため、周囲にスパナやめがねレンチを回すスペースを確保しにくい場所でも使いやすい部品です。そのため、工作機械、産業機械、金型、治具、精密装置などで広く使われています。

 一方で、六角穴付きボルトを使えば、必ず設計しやすくなるわけではありません。六角レンチを差し込むためのスペースが必要であり、穴の奥に配置すると、工具の長さや作業姿勢によって締め付け作業が難しくなる場合があります。

 また、六角穴を傷めると、ボルトを取り外せなくなる可能性もあります。特に小径の六角穴付きボルトでは、工具のかかり方や締め付けトルクにも注意が必要です。

 六角穴付きボルトについては、JIS B 1176「六角穴付きボルト」に規定があります。設計者は、六角穴付きボルトを単に「コンパクトで使いやすいボルト」と考えるのではなく、呼び径、長さ、強度区分、工具スペース、座面、分解性などを含めて選定しなければなりません。

 特に、後工程まで考えると、工具スペースは見落としやすいポイントです。部品としては配置できても、「実際には六角レンチが入らない」「レンチは入っても回せない」「長いレンチが周囲の部品に当たる」――。こうした問題を設計段階で確認しておかなければ、組み立て現場や保守現場で大きな手戻りにつながります。

 締結要素は、3D CAD上に部品を配置できればよいのではなく、実際の作業まで含めて考える必要があるのです。また、実際の選定では、外力の大きさや方向、必要な締め付け力、ボルトの強度区分、相手材の強度、ねじ込み長さなども確認します。

規格は暗記するのではなく、選定に活用する

 ここで、ボルトやねじ締結部品に関する主なJISを整理しておきます。規格番号を覚えること自体が目的ではありません。規格に基づいた部品選定や図面指示を行い、設計、調達、組み立ての各工程で認識をそろえるために活用することが重要です。

区分 対象 参考にする主なJIS 設計で確認したい視点
ボルト 六角ボルト JIS B 1180
「六角ボルト」
一般的なボルト締結。呼び径、長さ、ねじ部、強度区分、頭部形状を確認する
ボルト 六角穴付きボルト JIS B 1176
「六角穴付きボルト」
装置、治具、金型などで多用される。呼び径、長さ、強度区分、六角穴、工具スペース、座面、分解性を確認する
ボルト 四角ボルト JIS B 1182
「四角ボルト」
特定用途の締結に用いられる。頭部形状、回り止め性、使用箇所を確認する
ボルト 基礎ボルト JIS B 1178
「基礎ボルト」
機械や設備の据え付けに用いられる。埋込み方法、固定方法、施工条件、荷重条件を確認する
ボルト 座金組み込み六角ボルト JIS B 1187
「座金組み込み六角ボルト」
座金を組み込んだボルト。組み立て性、部品点数の削減、座金の脱落防止を確認する
ナット 六角ナット JIS B 1181
「六角ナット」
ボルトとの組み合わせを考え、種類、呼び、強度区分、座面、締め付け条件を確認する
小ねじ すりわり付き小ねじ JIS B 1101
「すりわり付き小ねじ」
小型部品の締結に用いられる。頭部形状、使用工具、分解性、作業性を確認する
小ねじ 十字穴付き小ねじ JIS B 1111
「十字穴付き小ねじ」
一般的な小型部品の締結に用いられる。頭部形状、使用工具、締め付け条件、作業性を確認する
表1 代表的な規格一覧

 表1は、筆者が代表的なJISを整理したものです。実際の設計では、最新版のJISに加え、部品メーカーのカタログ、社内標準、調達性なども合わせて確認する必要があります。

 締結要素は、外観上は小さく、目立たない部品です。しかし、ボルトが緩む、座面が変形する、ねじ山が破損する、工具が入らず組み立てられないといった問題が生じれば、機械全体の性能や信頼性に影響します。

 「取りあえずボルトで固定する」のではなく、「どのような荷重を受けるのか」「どの程度の締め付け力が必要なのか」「相手部品や作業条件に適しているのか」を考えることが、締結部を設計する上での基本です。

 さて、ここまで機械設計7つ道具として、JIS製図、精度設計、材料、強度設計、信頼性設計、そして要素設計について解説してきました。これらはそれぞれ独立した知識のように見えますが、実際の設計では全てがつながっています。

 次回は、その一連の設計知識を実務の中でどのようにつなぎ、活用していくのかという視点から、3D CADを取り上げます。

 3D CADは、単に立体形状を作るための作図ツールではありません。設計意図を形にし、機械要素の配置を確認して、干渉や組み立て性を検討した上で、図面、解析、製造情報へと展開していくための設計基盤です。

 今回取り上げた締結要素も、3D CAD上にボルトやピンを配置するだけでは十分ではありません。「正しく締結できるか」「必要な位置決めができるか」「工具が入るか」「分解できるか」「想定した荷重を受けられるか」――。そうした設計判断を、形状と結び付けて考える必要があります。

 機械要素は、3D CAD上に配置できれば設計が完了するわけではありません。その役割や働きを理解し、形状や構造に反映して初めて、適切に使いこなせるのです。 (次回へ続く)

⇒ 連載バックナンバーはこちら

著者プロフィール

土橋美博(どばし よしひろ)
DOBASHI DESIGN LAB 代表/Founder&Principal

半導体組み立て関連装置メーカー、液晶パネル製造関連装置メーカー、製品設計会社を経て独立し、開発/設計/製造DXを現場経験で支援するDOBASHI DESIGN LABを創立。

ソリッドワークス・ジャパンユーザーグループ(SWJUG)、ワールドワイドのソリッドワークス・ユーザーグループネットワーク(SWUGN)のリーダーも務める。


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