信頼性設計とは何か 壊れにくさを作り込む設計の基本:若手エンジニアのための機械設計入門(15)(1/2 ページ)
3D CADが使えるからといって、必ずしも正しい設計ができるとは限らない。正しく設計するには、アナログ的な知識が不可欠だ。連載「若手エンジニアのための機械設計入門」では、入門者が押さえておくべき基礎知識を解説する。第15回は、壊れにくさを設計で実現するための「信頼性設計」の基本的な考え方について整理する。
機械設計というと、3D CADで形を作ったり、図面を描いたりする作業を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、設計の本当の目的は「形を作ること」ではありません。製品が使われる中で、安定して機能し続けることにあります。この考え方が「信頼性設計」です。
信頼性設計とは、簡単に言えば、壊れにくく、長く安心して使えるようにするための設計です。ただし重要なのは、壊れないことだけではなく、使われる環境の中で必要な性能を維持できることです。
信頼性とは何か
まず「信頼性」という言葉の意味を整理しておきます。
信頼性とは、ある製品が、決められた条件の中で、決められた期間、正常に動き続ける能力のことです。ここでいう「正常に」とは、単に動くことではなく、必要な性能を満たしている状態を指します。
例えば、ある装置が「1年間、毎日8時間使用しても正常に動く」のであれば、その装置は信頼性が高いといえます。ここでのポイントは次の3つです。
- どのような条件で使うのか(温度/振動/湿度など)
- どれくらいの期間使うのか
- どの程度の性能を維持するのか
これらが曖昧なままでは、信頼性を評価できません。
機械の寿命はどう考えるべきか バスタブ曲線から始める信頼性の理解
機械の寿命を考えるとき、「どれくらい使えるのか」という1つの数値で捉えたくなります。しかし実際には、同じ製品であっても、全てが同じタイミングで壊れるわけではありません。早く壊れるものもあれば、長く使えるものもあります。
つまり寿命とは、1つの値ではなく、ばらつきを持った現象です。この寿命のばらつきと故障の傾向を理解するために、まず押さえておきたいのが「バスタブ曲線」です(図1)。
これは、時間と故障の起きやすさ(故障率:単位時間当たりの故障の発生しやすさ)の関係を示したもので、形が浴槽(バスタブ)に似ていることからこのように呼ばれます。この曲線は大きく3つの期間に分かれます。ここでは、設計要因の観点から見ていきます。
1.初期故障期
製品を使い始めた直後に起きる故障です。原因としては、加工ばらつき、組み立てミス、初期不良などが挙げられます。
設計面では、無理な公差設定、組み付けしにくい構造、部品点数の多さ、調整に依存する設計、異品組み付けを起こしやすい形状などが初期故障につながります。
つまり初期故障は製造現場だけの問題ではなく、設計段階で組み立てやすさやばらつきの吸収を十分に考慮しているかどうかが大きく影響します。
2.偶発故障期
しばらく安定して使える期間です。ただし、まれに予期しない故障がランダムに発生します。原因としては、想定外の負荷、使用環境の変動、部品のばらつき、外乱などがあります。
設計面では、安全率不足、環境条件の想定不足、局所的な応力集中、熱の影響を考慮しない構造、振動や緩みへの配慮不足などが要因となります。
この期間の故障を減らすには、通常条件だけでなく、実際の使用環境や異常時も含めて余裕を持たせた設計が重要です。
3.摩耗故障期
長期間使用することで、摩耗や劣化により故障が増えてくる期間です。例えば、軸受の摩耗、樹脂の劣化、ばねのへたり、潤滑性能の低下などが代表例です。
設計面では、材料選定の不適切さ、潤滑や冷却への配慮不足、摩耗部の面圧や接触条件の検討不足、交換や保守を考慮しない構造などが要因となります。
摩耗故障期を遅らせるためには、寿命を見込んだ材料/構造の選定と、保守しやすい設計が欠かせません。
機械の寿命はどうやって評価するのか ワイブル解析という考え方
ここまで、機械の信頼性を「壊れにくさ」という視点で見てきましたが、もう一つ重要な観点があります。それが「寿命」です。
設計者は、「この部品は何時間もつのか」といった問いに直面します。しかし実際には、同じ設計/同じ製造条件であっても、全てが同じタイミングで壊れるわけではありません。
早く壊れるものもあれば、平均的なもの、長く持つものもあります。つまり寿命とは、単一の値ではなく、ばらつきを持った分布として捉える必要があります。
この寿命のばらつきと故障の傾向を整理するために用いられるのが「ワイブル解析」です。
ワイブル解析とは何か
ワイブル解析とは、製品の寿命データを統計的に整理し、「どのくらいの確率で壊れるか」を評価する手法です。個々の寿命ではなく、全体としての壊れ方の傾向を把握するためのものです。
例えば、ある部品を100個用意して耐久試験を行うと、「何時間で壊れたか」というデータが得られます。このデータをそのまま見るのではなく、
- どの時点で何%が壊れたか
- 故障の進み方は早いのか遅いのか
といった観点で整理することで、寿命の傾向を把握します。このとき重要になるのが「ワイブル分布」という考え方です。
ここでは、個々の寿命ではなく、「ばらつき」と「壊れ方の特徴」に着目します。どのように壊れていくのかを分布として捉えることで、設計上の弱点を見つけやすくなります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
