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生成AIで現場社員がシステムを開発 「人中心」の製造DXを自走させた3社の方法モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)

製造DX協会は、第2回年次総会を開催し、1年間の活動成果を発表した。本稿では、製造DX協会の取り組みと、第2回年次総会内で紹介されたDX事例をいくつか紹介する。

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設計図を示しデータ活用を加速させた石川樹脂工業

 石川県の樹脂成形メーカーである石川樹脂工業とエスマットで取り組んだ全社でのデータ活用の仕組みづくりについても事例として紹介された。

 石川樹脂工業は、1947年創業で樹脂成形を本業としているが、最近では割れない食器「ARAS(エイラス)」で大きな注目を集めている企業だ。DXプロジェクトを推進した理由として、石川樹脂工業 専務取締役の石川勤氏は「データが使い切れていない」ことを挙げる。

「私自身はAIを個人レベルで使いまくっているのに、会社組織としては十分に活用が進んでいないという課題があった。自分はこんなに使っているのに会社として活用が進まないのはなぜなのかという組織展開の壁があった」(石川氏)

 ただ、DXを進めようとしてもいきなりツールを中心に考えてもうまくいかないことが多い。支援したエスマットの林氏は「いきなりシステム実装をするのではなく、やりたい分析を徹底的に議論し、一部のデータで小さくPDCAを回し、データの流れを設計するという3つの工程に半年ほど時間をかけた。いきなりツールを入れても失敗することが多い」と説明する。

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石川樹脂工業がDXを進めるのに重視したプロセス[クリックで拡大] 出所:石川樹脂工業

 多岐にわたる試行や基準づくりを進める中で、石川氏が以前勤務していたP&Gの工場運営ノウハウを取り入れた。それを基準にプロセスやデータの流れを設計することで、全体の形を構築できたという。

 石川氏は「P&Gでは、工場運営において稼働信頼性指標『PR(Process Reliability)』を重視しており、最終的にそれを導入することを決めた。これを基準とし、点在していたデータを整備し、停止の要因などを日次、月次、年次で確認できるダッシュボードを作った。さらに、その情報を基に、生成AIを使い、稼働率の低い機械と要因の仮説、対策をまとめたサマリーメールが自動で送信される仕組みとした。現場ではあまりシステムを考えなくても動けるようにした。一方で、データフローやマスターデータの整備などには泥臭く、地道に取り組んだ」と語る。

 取り組みの中で石川氏が印象に残っているのが、工場長の言葉だ。「以前は『予定やノウハウは頭の中にある』と話し、属人的プロセスを重視していたが、このプロジェクトの後は『PRのレポートとDDS(日常管理、P&G式の毎日のチームミーティング)があればやる』というようにデータを中心とした運営を当たり前のものとするようになった。その変化に感動した」と石川氏は述べている。

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石川樹脂工業がDXで実現した日次PRレポート[クリックで拡大] 出所:石川樹脂工業

 一連の取り組みについて、林氏は「今の時代は、実装はAIでもできるが、1万個のアプリを作っても10個しか使われていないということも多い。KPIツリーや全体のデータ設計図を描く上流の部分こそが重要で、そこが組み立てられない場合は、外部の力を借りる価値がある」と考えを述べる。

人が成長し続ける現場を目指したセキ技研

 新潟県のセキ技研と匠技研工業は、人の動きをAIを活用してデータ化し、人が成長し続ける製造現場に向けた取り組み事例を紹介した。

 セキ技研は製造ラインの自動化と省人化を実現する生産設備をオーダーメイドで製造するメーカーで、さらに自社設備を活用して電子コネクターのEMS(電子機器生産受託サービス)なども展開する。1991年創業で従業員数は約100人である。

 その中でEMS事業におけるコネクターの生産ラインで、人によって生産高にばらつきが出るという課題があり、この「人の生産性」の可視化が必要だという発想に至ったという。セキ技研 代表取締役社長の関将人氏は「設備の稼働データはあるが、人の稼働データは取れていなかった。見える化されていないと、成長を実感できず、モデルケースも把握できない」と課題感について語る。

 そこで、AIを含むデジタル技術で、人の生産性を可視化するための取り組みを開始した。しかし、その取り組み方も最初から新たなデータの取得を開始したのではなく、まずは、手元にある帳票をデータとし、これを分析することで、人の生産性を可視化できないか検証を進めた。「最初から大規模な投資は難しく、まずは手元にあるデータで小さく検証を進め、示唆が得られそうだということを確認してから、追加で必要なデータの定義や取得を進めるという流れで深掘りしていった」と関氏は説明する。

 具体的には、設備稼働記録表と機械稼働ログを突き合わせることで、人の生産性の手掛かりを探した。結果としてこの2つのデータの突合するだけでも担当者ごとの明確な差が可視化できたという。明確な違いを確認した上で、「なぜ生産性が高いのか」を熟練者の作業の動画撮影やインタビューで、形式知化していった。「実際にデータで見ることで、ベテランや社歴の長い人がやっていることでも、必ずしも正しいことばかりとは限らないことも分かってきた。人間のバイアスを排除することで、データは大きな武器になった」と関氏は効果について語る。

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セキ技研が使った「既にある」データ、左が設備稼働記録表で右が機械稼働ログ。これらを突合することで人の生産性の見える化を進めた[クリックで拡大] 出所:セキ技研

 さらに、これらの形式知化されたノウハウを共通のデータベースとし、評価と報酬に結びつける人事評価制度への組み込みを行った。そして、運用プラットフォーム「エジソンレコード」を生成AIと社内SEで自社開発し、これらを生かす基盤とした。現場の担当者は日報を提出すると、プラットフォームがそこから気付きやノウハウを抽出してタレントデータベースに蓄積し、ダッシュボードでデータを閲覧できるようにする。「開始2カ月半だが、1200件以上の現場での気付きやノウハウが寄せられる」と関氏は語る。

 AIの価値について関氏は「現場の生産性向上はAIで高められるが、それは他社でも可能で大きな競争優位性にはならない。AIの最大のインパクトは、経営判断が圧倒的に早くなるという点だ。AIを壁打ち相手に使うことで、人事制度の変更に関する意思決定や新戦略の立案、社員への方針伝達などを、驚異的なスピードで進められるようになった。経営者こそが最もAIを使うべきだ」と考えを述べている。

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セキ技研のエジソンレコードのイメージ[クリックで拡大] 出所:セキ技研

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