生成AIで現場社員がシステムを開発 「人中心」の製造DXを自走させた3社の方法:モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)
製造DX協会は、第2回年次総会を開催し、1年間の活動成果を発表した。本稿では、製造DX協会の取り組みと、第2回年次総会内で紹介されたDX事例をいくつか紹介する。
日本の製造業の実態に即したDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する製造DX協会は2026年7月29日、第2回年次総会を開催し、1年間の活動成果を発表した。本稿では、製造DX協会の取り組みと、第2回年次総会内で紹介されたDX事例をいくつか紹介する。
日本の製造業のためのDXの在り方を模索する製造DX協会
製造DX協会は「デジタルが当たり前のモノづくりへ」をコンセプトとし、製造業がノギスやレンチのようにデジタル技術を当たり前に活用する社会を目指し、政策提言や市場啓発、人材育成などに取り組む団体だ。2024年7月に設立され、主に製造業や製造関連のデジタルスタートアップ企業がメンバーとして参加し、2年間にわたって活動してきた。
製造DX協会 代表理事でエスマット代表取締役の林英俊氏は「2年間の活動の中で日本式の製造DXを模索してきたが、やはり『人中心のDX』が重要だと感じている。組織を変える時の現場サイエンティストをどう育てるか、トップとボトムを回してどう組織を変えていくのかなどが重要だ。また、デジタルでも密に結合するよりも『疎結合なデジタル』が求められている」と活動の進捗について語る。
その中で、組織として「日本の強みを引き出す」「ニュートラルであり続ける」「実践と結果にこだわる」「現場主義を貫く」の4つをコアバリューとして取り組んできており、13社のDX企業会員、16社の製造業会員で、具体的な事例創出に積極的に取り組んできた。林氏は「2年目の取り組みとして、事例を4件生み出すことができたのは大きな成果だ。また、年6回の勉強会も開催でき、これらの活動で29社の会員増につながった」と手応えについて述べている。
生成AIでDXツールと人材を内部で育てて変革を加速させたソミック石川
その事例として紹介されたものの1つが、自動車部品製造を行うソミック石川と、ALGO ARTISによる、生成AIを活用しDXツールと人材を内製で育てて変革を進めた取り組みだ。
ソミック石川は、静岡県浜松市に本社を置き、2026年に創業110周年を迎える老舗メーカーだ。主に自動車用のボールジョイントの開発、製造、販売を行っており、国内7工場、海外12拠点を保有する。売上高は連結で約1300億円、従業員数は6000人の企業だ。生産工程は、トヨタ生産方式を実践し、地道に改善を進めてきたという。
同社はCPS(サイバーフィジカルシステム)の実現を目指し、リアルとデジタルを完全に一致させ、“かんばん”のデジタル化やリアルタイムの進捗管理などを進めようとしたが、うまくいかなかったという。「そもそもの社内のデータベースや部品表、工程コードなどもバラバラで進めることができなかった。そこで、外部の力を頼ろうとしてALGO ARTISさんに相談したが『外注費を考えるとこの効果ではペイしない。やめたほうがよい』と諭された」とソミック石川 代表取締役の斉藤要氏は当時を振り返る。
そこで、ALGO ARTISの提案も受けて方針を転換し、生成AIを活用しながら社内で人を育てて、自分たちでツールを開発するという内製化へと舵を切った。ソミック石川の斉藤氏は「以前にERPを導入した際に外部ベンダーに丸投げをした結果、社内に分かる人材がいなくなり改善が進まないこともあった。その反省も踏まえ、改善の主導権を社内に戻すためにも社内の人材を育てるボトムアップの道を選んだ」と説明する。
一方、相談を受けたALGO ARTIS 取締役の武藤悠輔氏は「生成AIの進化によって、ソフトウェア開発技術の専門性は薄まり、コモディティ化している。今後は『ITベンダーに要件定義から全てを任せる』ではなく、主導権を社内に取り戻すことも可能だ。ITベンダーの活用方法は組織全体のガバナンス構築や高度な技術サポートなど、従来と異なる位置付けで活用すべきだ」と述べている。
そこで生成AIを活用したツールやシステム開発の内製化に向けた取り組みを開始した。まず、ALGO ARTISに生成AIを活用したプログラム作成の勉強会を開催してもらい、第1期生を育成した。次に、その学びを終えた第1期生が、各部門などで勉強会を開催し、2期生、3期生へと活動を広げていった。教育プログラムの参加メンバーについても、ソフトウェアを学んでいる社員だけではなく、一般事務職の社員などにも参加を促し、プログラム習得のハードルを下げたことがポイントだったという。
これらを経て、各部署でもAIを活用したプログラム作成が自走的に進み、各部署でさまざまな業務のDXが進んだ。実際に現場の一般社員が作ったものとして、3000台ある設備の負荷や必要人員をExcelとの連携でボタン1つで一元的に算出し、可視化する「負荷計画システム」などがある。また、自動車メーカーから車単位で届く内示情報を、ソミック石川の生産部品の情報に切り分けて、年間での負荷などをシミュレーションする「所要量展開システム」などが開発され、実際に使われているという。
ソミック石川の斉藤氏は「一生懸命実務をやる誠実な社員が、生成AIと何度も何度もやりとりを繰り返してプログラムを作っていく泥臭いプロセスが改善文化には合っている。結果としてAIによりスポットライトが当たる人材の種類が増え、新たなカルチャー醸成につながった。全員が1%の力を付ければ、国内に2000人いる社員の力で大きな成長の余地を作ることができる。この改善プロセス自体が競合優位性の源泉となる」と語っている。
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