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データだけ見ても人は動かない ヤマ発製造DXの失敗が生んだ現場サイエンティストものづくりワールド[東京]2026(1/3 ページ)

日本最大級の製造業総合展示会「第38回 ものづくりワールド 東京」において、ヤマハ発動機による講演「現場サイエンティストによる業務プロセス革新〜過去の後始末から未来創造へ時間シフト〜」が行われた。講演の模様をダイジェストで紹介する。

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 日本最大級の製造業総合展示会「第38回 ものづくりワールド 東京」(2026年7月1〜3日、東京ビッグサイト)において、ヤマハ発動機による特別講演「現場サイエンティストによる業務プロセス革新〜過去の後始末から未来創造へ時間シフト〜」が行われた。

 講演では、ヤマハ発動機 執行役員 生産技術本部長の茨木康充氏が、その考え方に至るまでの経緯を紹介するとともに、同社で現場サイエンティストとして活動するモノづくりDX技術部 現場サイエンティスト育成グループの岡本宗晃氏が、実際の取り組みを紹介した。

 AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)を導入すれば製造DX(デジタルトランスフォーメーション)は加速する――。

 そんな見方に対し、茨木氏は「DXの本質は人づくりにある」と訴える。きっかけとなったのは、2018年に経験したDXプロジェクトの失敗だった。AIやビッグデータ分析などに数千万円を投じながら、「1つも残っていない」という苦い経験を経てたどり着いたのが、「現場サイエンティスト」という新たな人材像である。

ヤマハ発動機が「現場サイエンティスト」などの取り組みを紹介
ヤマハ発動機が「現場サイエンティスト」などの取り組みを紹介

「良かれと思ったDX」が現場に響かなかった

 「2018年に製造DXの推進を任され、AI判定やビッグデータ分析、見える化など、当時流行していたことは一通り取り組んだ。しかし、正直に言えば、その1年間でやったことは今、1つも残っていない」

 講演で、茨木氏は自社の経験を包み隠さず明かした。

 AIを活用した品質判定導入の際は、99.8%という高い精度を達成した。しかし、品質管理の担当者から返ってきたのは、「残り0.2%を許容するということか」という厳しい言葉だった。設備の状態をモニターで見える化しても、「見える化して、誰がどうするのか。結局は技術部門がやることではないか」という冷めた反応だった。

良かれと思って現場へ持っていったものが、振り返れば手段の押し付けでしかなかった。『PoC』という便利な言葉を使っていたが、現場には全く響いていなかった」(茨木氏)

 AIやIoT、クラウドなど、最先端とされた技術を導入しても、現場の仕事そのものは変わらなかった。では、現場は本当は何に困っていたのか。茨木氏は、自身が工場長時代に一緒に働いた職長や工長の元を訪ね、改めて話を聞いた。そこで返ってきた答えは、見える化などではなかった

「“こうすれば良くなる”という経験はある。でも、それを上司に提案すると『本当に効果があるのか』『ROI(投資利益率)はどうなのか』と聞かれる。『やってみなければ分からない』とは言えず、結局予算が付かない」(茨木氏)

 現場には長年培われた経験がある。しかし、それを客観的に説明する材料がないため、改善提案が前へ進まない。不良や設備故障が起きるたびに原因究明会議が長引き、最後は経験豊富な人や声の大きな人の意見に落ち着いてしまう。

「現場の頭の中には経験則がある。でも、それをうまく説明できない。そこに本当の困りごとがあった」(茨木氏)

 この気付きが、ヤマハ発動機のDXを大きく方向転換させることになる。

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