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いざ「Re:Nissan」実現へ、日産栃木工場が挑んだ「生産体制の比例化」ものづくりワールド[東京]2026(3/3 ページ)

日本最大級の製造業総合展示会「第38回 ものづくりワールド 東京」において、日産自動車による講演「自動車産業を取り巻く環境変化に対応した生産体制の比例化 需要変動に負けない工場へ―生産体制の比例化に挑んだ現場の失敗と再挑戦」が行われた。講演の模様をダイジェストで紹介する。

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中間目標を変え、ついにフレキシブル生産を達成

 再挑戦では、KPI(中間目標)を見直した。従来の「作業習熟完了率」に加え、「自工程品質保証度」を新たに設定した。作業ができるかだけでなく、品質を工程内で保証できているかを確認する指標である。

 この2つが100%になったことを確認し、栃木工場は再びフレキシブル生産へ移行した。結果、2026年11月24日にフレキシブル生産を達成。計画からは遅れたものの、作り込み品質は安定した。

「計画に対しては遅れたが、再挑戦してやり切ったことは、われわれにとって大きな成功だったと思う」(江口氏)

 この取り組みにより、#1ライン#2ラインを合わせて管理できるようになり、無駄な残業や体制割れを大幅に削減できたという。

 江口氏は、最初の失敗を「目的の解釈が曖昧だったこと」に尽きると振り返る。当初は「決められた期限までに生産を達成し、年度予算達成に貢献する」という短期的な視点が強かった。しかし本来の目的は、現場管理の質を維持しながら車両フレキシブル生産を実現し、将来にわたるコスト競争力を高めることだった。

 目的が変われば、優先順位も変わる。以前は「コスト、納期、品質」の順で見ていたが、再挑戦では「品質、納期、コスト」へと再定義した。優先順位が変わることで、見るべきKPIも、取るべき戦略も変わった。

比例化は単なる効率化ではない

 講演後半で江口氏は、さらに広い概念として比例化を説明した。比例化とは、単に人員や時間を需要に合わせることだけではない。固定観念にとらわれず、価値の出し方や役割そのものを変えることも比例化だという。

 その一例が、塗装治具の洗浄である。従来は一度塗装したら治具を洗う運用だった。これは台数には比例しているが、無駄な洗浄も含んでいた。そこで「治具の機能を満たすには何が必要か」という視点に変え、塗料が一定以上たまった時や、必要な穴径が確保できなくなった時に洗浄する基準へ見直した。これにより清掃頻度を大きく下げた

 非量産工程の活用も進めている。栃木工場では非量産の鋳造工程を使い、同社がレースで培った技術を市販車やカスタムパーツに反映させるモータースポーツ専門ブランド「NISMO」のヘリテージ部品や、販売時に顧客へ渡すグッズなども生産している。工場の価値は量産だけではないという考え方だ。

 さらに、工場の役割も変化している。これからの工場では「車を作る人」から「作って魅力を伝える人」へ広がっていく必要がある。栃木工場では、希望する従業員が日産自動車のクルマの魅力を自ら発信するブランドアンバサダー活動にも取り組んでいる。

「比例化は単なる効率化ではない。需要に合わせるだけではなく、価値の出し方そのものを変えることも比例化だと思う」(江口氏)

現場が挑戦できる「安全ネット」を張る

 最後に江口氏は、今回の取り組みから得た学びとして「自律自走の精神」「安全ネットを張る」「傾聴する姿勢」の3つを挙げた。

 自律とは、全員が何が正しいかを考えて行動すること。自走とは、全員が同じ方向へ自ら進むことだ。経営再建計画のプレッシャーと、現場一人一人の腹落ち感が、今回の自律自走を引き出したという。

 また、挑戦には安全ネットが欠かせない。サーカスで安全ネットがなければ、確実にできる技しかやれないのと同じように、現場も戻れる場所があるから難しい挑戦ができる。

「9月にできれば120点、11月に達成で100点と最初から構えていた。だから失敗しても一度やめる判断ができたし、戻れるからこそ現場も挑戦することができた」(江口氏)

 そして、現場の声を聞く姿勢も重要だ。机上で立てた戦略と、実際に実行する現場の間には、必ず矛盾がある。その矛盾を見つけるには、現場の声を拾い上げなけれ

ばならない。

「現場には言葉にできない言葉がある。部下の話を遮らずに最後まで聞き、部下の意見を肯定する。そうした姿勢が非常に大事だと思う」(江口氏)

 需要は変わる。しかし、生産体制は簡単には変えられない。品質は守りたい。コストも下げたい。現場に任せたい。だが、失敗は避けたい。モノづくりの現場には、いくつもの矛盾がある。江口氏は、モノづくりの進化はそうした矛盾に向き合うところから始まると強調した。

「比例化とは、人を単純に増やしたり減らしたり、動かしたりすることではない。需要に合わせて考え方を変え、仕組みを変え、役割を広げる。そして一番大事なのは、現場が自ら柔軟に動ける環境を作ることだ」(江口氏)

 需要変動に負けない工場とは、変動を力ずくで吸収する工場ではない。現場が自ら考え、失敗から学び、もう一度挑戦できる工場である。栃木工場の取り組みは、そのことを示している。

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