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いざ「Re:Nissan」実現へ、日産栃木工場が挑んだ「生産体制の比例化」ものづくりワールド[東京]2026(2/3 ページ)

日本最大級の製造業総合展示会「第38回 ものづくりワールド 東京」において、日産自動車による講演「自動車産業を取り巻く環境変化に対応した生産体制の比例化 需要変動に負けない工場へ―生産体制の比例化に挑んだ現場の失敗と再挑戦」が行われた。講演の模様をダイジェストで紹介する。

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異なる2つのラインをまたぐ難しさ

 発想はシンプルだが、実現は容易ではなかった。#1ライン#2ラインは、作っている車も、設備も、人員構成も大きく異なるからだ。

 #1ラインは1971年から続く歴史あるラインで、ガソリンエンジン車を中心に生産してきた。組み立て作業のほぼ100%を人の手で行っており、高い技能が求められる。そのため正規従業員比率は約80%と高い。

 一方、#2ラインは2021年に刷新された新しいラインで、EV専用の新世代プラットフォームに対応する。部品組み付けの自動化率は25%まで高められており、作業時間は#1ラインの半分程度で製造できることから、正規従業員比率は45%に抑えられている。

日産自動車 栃木工場 工場長の江口智樹氏
日産自動車 栃木工場 工場長の江口智樹氏

「約1000人がラインを行ったり来たりしながら、全く異なるタイプの車を異なる条件で作る。これはさすがに難しいのではないかと当初は考えていた」(江口氏)

 それでも栃木工場は挑戦を決めた。背景にあったのは、現場の危機感と自主性だった。日産自動車は経営再建計画「Re:Nissan」の途上にあり、現場の従業員にも「何かをしなければ生き残れない」という思いがあったという。

 現場には自信もあった。栃木工場では2009年当時、#1ラインで8モデル、#2ラインで4モデルを同時生産していた経験がある。多車種を扱ってきた技能と蓄積が、現場の勝算になっていた。

「現場の危機感と自信から生まれた自主性が、フレキシブル生産に挑戦する判断の決め手になった」(江口氏)

GT-R生産終了前倒しで準備も品質問題で撤退

 挑戦を決めたのは2025年6月末。効果を最大化するため、約2カ月で準備を終える計画を立てた。作業編成の検討、作業習熟、現場レイアウト変更を短期間で進める。習熟負担を下げるため、当初予定していたGT-Rの生産終了を1カ月前倒しし、車種数を減らす対応も取った。

 作業習熟では、生産を夜勤に集中させ、昼勤で集中的に訓練を行った。検査工程は生産ラインより2カ月遅らせて立ち上げることにした。万が一、生産ラインで問題が起きても、最終検査で品質を担保するためだ。

 人員配置にも工夫を凝らした。単に人数を合わせるのではなく、「技能の総量」をそろえることを重視した。高技能作業者を2つのグループに分ける際には、役割等級や技能レベルだけでなく、性格や家庭事情まで考慮したという。

「夫婦で勤務を合わせたい方もいれば、お子さんの関係でどちらかは昼勤にいたいという方もいる。そうした声も吸い上げながら、生活を考慮した班を組むことで出勤率を維持する作戦を取ることにした」(江口氏)

 準備は計画通り進み、2025年9月29日の週からフレキシブル生産へ移行した。しかし結果は、期待通りにはならなかった。作り込み品質が安定しなかったのだ。ボルトの使い間違いや締め付け未実施といった、単純だが重大なミスが発生した。

「このままでは生産を続けることはできないと判断し、10月3日からいったん元の体制に戻すことにした」(江口氏)

「作業ができる」と「品質を保証できる」は違う

 なぜ失敗したのか。江口氏らはKGI(最終目標)とKPI(中間目標)を振り返った。移行前に重視していたKPIは、作業習熟の完了率だった。作業順序が正しく、目標時間内で作業できているかを確認し、100%達成を目指していた。しかし、ここに落とし穴があった。

「作業ができることと、品質を保証できることは全く異なると、改めて気付かされた」(江口氏)

 例えばコネクター結線であれば、単に手順通りに差し込むだけでは不十分だ。「カチッ」と音がするまで確実に差し込むことが、品質を守る急所になる。部品1つ1つの取り付け手順だけでなく、守るべきポイントが守られているかを確認しなければ、自工程で品質を保証したとはいえない。

「モノづくりの基本、原点が抜け落ちていたことが大きな反省になった」(江口氏)

 もう1つ見落としていたのが、工長など管理監督者の業務負荷だった。見るべき工程が増えたことで、管理業務は128%に増加していた。表面上は対応できているように見えても、実際には作業観察や現場把握の時間が十分に取れていなかった。

 再挑戦に向けて、栃木工場は視点を変えた。まず、作業観察の方法を見直した。従来は1サイクルの作業を見て、目標時間を達成しているかを主に確認していた。これを、部品ごとの単位作業に分解し、品質上の急所が守られているかを見る形に変えた。ベテラン工長による若手工長へのOJTも始めた。

 さらに、標準作業書の復習活動も行った。フレキシブル生産では、スポーツカー需要が低い時期には#1ラインの勤務が昼勤4時間だけになる。次に同じ作業に戻るまで約9日間空くこともあり、毎回長期連休明けのような状態になる。そこで毎週月曜日の始業時に標準作業書で手順を復習し、1台生産した後に作業書を見ながら品質を確認するようにした。

 管理監督者の負荷軽減にも取り組んだ。従来は「困ったことがあればプロジェクトメンバーが助ける」という曖昧な支援だったが、工長からはみ出した業務を洗い出し、プロジェクトメンバーの役割として明確に割り当てた。二重管理の廃止や点検手順の効率化、点検簿の電子化も進めた。

「単純に現場に『頑張りなさい』と言うだけでは進まない。現場が役割を果たせるように周辺業務を減らし、具体的な支援の仕組みを作ることが重要だと気付けた」(江口氏)

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