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投資は多いのに稼げない、日本製造業の投資先を分析する小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(49)(2/2 ページ)

ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は、製造業の投資内容について解説します。

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機械/設備への投資

 製造業では、工場などの建物に加え、機械/設備への投資が欠かせません。特に生産用設備/機械への投資は製造業における付加価値の向上には欠かせません。図4は、この機械/設備への製造業の投資を国ごとにまとめたものです(※)

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図4:製造業の機械/設備への投資の各国比較[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 各国製造業の機械/設備への投資について、対付加価値比を計算してみると、日本は15%前後で推移しており、イタリアとともに高い水準が継続しています。

 一方で、ドイツは2000年頃の10%程度から低下傾向が進み、2026年には7.6%と日本の約半分です。フランス、米国なども同程度で、英国はさらに低いですね。日本の製造業では、稼ぎの割に機械/設備への投資も多いことが分かります。

 次に、労働者1人当たりの機械/設備への投資の国際比較を行います(図5(※)

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図5:労働者1人当たりの機械/設備への投資の各国比較[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 労働者1人当たりの機械/設備への投資額を見ても、日本は相対的に高い水準が維持されてきました。近年ではイタリア、米国に追い付かれていますが、ドイツやフランスなどを上回り、金額的にも多くの投資を行っていることが確認できます。

(※)図4と図5で2005年のイギリスが突出した数値となっていますが、こちらは公的企業に分類される英国核燃料会社から廃炉機関への原子炉資産の移管が影響しています。

知的財産生産物への投資

 最後に、研究/開発やソフトウェアなど知的財産生産物への投資です。図6が、知的財産生産物に対する投資の国際比較です。

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図6:製造業の知的財産生産物への投資の各国比較[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 知的財産生産物に対する投資を計算してみると、各国で右肩上がりなのが特徴的です。建物/構築物や機械/設備が横ばいから微減傾向にある状況と対照的な結果だといえるでしょう。ハードウェアというよりも、研究/開発やソフトウェアの方へ投資を振り向けている変化が確認できますね。その中でも、特に日本は米国とともに非常に高い水準のR&D投資を行っているようです。

 労働者1人当たりの知的財産生産物の投資についても見てみましょう(図7)。

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図7:労働者1人当たりの知的財産生産物への投資の各国比較[クリックで拡大] 出所:OECD Data Explorerを基に筆者にて作成

 知的財産生産物への投資について、労働者1人当たりの金額水準を計算してみても日本は米国とともに非常に高い水準が続いてきました。ただし、近年では米国が増え続けているのに対して、日本は低下しています。円安が進んだことでドル換算値だと低下しやすくなっている面もありますが、相対的にR&D投資の勢いがやや低下しているようにも見受けられます。近年ではドイツに抜かれ、英国、フランスとも同程度となっています。

製造業の投資の特徴

 今回はOECDのデータベースから、各国製造業の投資の種類と規模について国際比較してみました。日本の製造業は、建物/構築物、機械/設備、知的財産生産物のいずれでも高い水準の投資が継続してきたことになります。

 ただし、対付加価値比では高い水準が継続していますが、金額水準ではかつてほどの圧倒感はなく、他国と同程度となってきています。付加価値の割に投資は多いものの、その投資によって付加価値が増える方向には変化してこなかったことがうかがえます。

 前回紹介した通り投資が多く、付加価値が増えなければ、その維持負担ばかりが嵩んで、かえって企業の取り分は減ります。日本の製造業は金額的な名目の付加価値は目減りしましたが、数量的には拡大してきました。

 このような経緯と、今回の投資の多さを考慮すると、他国と比べれば多い投資が高付加価値化というよりも、「より安く、よりたくさん」という規模の経済を指向したものであったことが見えてきます。そして、その投資が付加価値の増加にうまく結びついてこなかったことになります。今後は、投資が付加価値の拡大につながる好循環を生み出せるかどうかが、日本製造業の課題といえそうです。

記事のご感想はこちらから
⇒本連載「小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ」の目次はこちら
⇒前回連載の「『ファクト』から考える中小製造業の生きる道」はこちら

筆者紹介

小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役

 慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。

 医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。

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