高導電と1GPaの強度を両立、次世代電子部品を支える新銅合金:材料技術
三菱マテリアルは、高い導電率と高強度を両立した銅合金「MSP5-SSH」を開発した。MSP5-SSHは、1GPa級の強度と優れた成形性を持ち、複雑形状の量産を可能にする。
三菱マテリアルは2026年7月14日、電子機器の小型化/高性能化ニーズに対応する高強度銅合金「MSP5-SSH(Super Spring Hard)」を開発したと発表した。
同製品は、従来のMSP5シリーズが持つ高い導電率を維持しながら、1GPa(1000MPa)級の高強度を実現した。これにより、電子部品のさらなる小型化や大電流化を可能にし、AIサーバやロボティクス関連部品、車載機器など次世代電子機器の高性能化に貢献する。
高い導電率や強度化が求められる電子部品
同社が2021年に本格量産を開始した「MSP5」は、マグネシウムを添加元素とする固溶強化型銅合金であり、強度、導電率、成形性を高いレベルで両立した材料だ。固溶強化型は、母相(溶媒原子)の中に別の原子(溶質原子)を溶け込ませること(固溶)により、材料を強化する手法を指す。
また、2025年には高強度タイプである「MSP5-ESH(Extra Spring Hard)」を開発し、高強度用途への適用を拡大してきた。
一方、近年、車載部品や産業機器、ロボティクス関連部品、AIサーバなどのデータセンター向け機器では、電子部品の小型化/高性能化が急速に進んでいる。それに伴い、電子部品に使用される材料には、高い導電率を維持しながら、さらなる高強度化が求められている。
こうしたニーズを踏まえて、同社はMSP5-SSHを開発した。MSP5-SSHは、43%IACSの高い導電率を維持したまま、1GPa級の高強度を実現。これにより、電子部品の小型化や大電流化を可能にするとともに、端子/コネクターの発熱低減や電力損失の抑制にも貢献する。
複雑形状部品の安定した量産を可能に
具体的には、従来のMSP5シリーズが持つ高い導電率を維持したまま強度を向上させることで、電子部品の小型化や大電流化を可能にしている。また、ベリリウム銅やチタン銅が使用されてきた高強度用途において、端子/コネクターの発熱低減や電力損失の抑制にも貢献する。
さらに、1GPa級の高強度を実現しながら、MSP5シリーズの特長である優れた成形性も維持している。高強度材料は一般的に加工時の割れが懸念されているが、端子成形で求められる箱曲げ加工においても最小曲げ半径R=0の加工に対応可能だ。プレス打抜き加工においても高い寸法精度を実現し、バリの発生を抑えられる。これにより、複雑形状部品の安定した量産を可能にする。
加えて、優れた製造性も備えている。固溶強化型銅合金であるため、ベリリウム銅やチタン銅などの析出強化型材料で必要となる複雑な熱処理を必要としない。これにより、製造プロセスの簡素化が可能となり、エネルギー使用量やCO2排出量の低減に貢献する。析出強化型は、固溶後、母相(溶媒原子)の中で別の原子(溶質原子)を析出させることにより、材料を強化する手法だ。
同製品は、三菱マテリアルグループが中期経営戦略で掲げる「資源循環ビジネスで未来を創る企業へ」の実現に向けた取り組みの1つとなる。同社は「量から質への転換」を進める中で、高付加価値製品へのシフトを推進しており、同製品もその一環として開発した。
今後は、電子機器の小型化/高性能化を支える高機能材料として、成長が期待される車載、産業機器、AIサーバ関連市場への展開を進めていく。
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