2026年のCHAdeMOの現在地と、今後に向けて提案したい2つの指針:和田憲一郎の電動化新時代!(64)(3/3 ページ)
急速充電規格の標準化団体であるCHAdeMO協議会の2026年の取り組みを紹介する。同協議会の大幅な体制変更があったため、これまでおおよそ年1回のペースで行ってきたインタビューではなく文書回答となった。筆者がCHAdeMO協議会総会に参加した所感と今回の回答書から、今後に向けて取り組むべき2つの指針を提案したい。
取材を終えて
CHAdeMO協議会は、多数の企業/団体によって構成される組織体であり、代表理事や理事、事務局長などの役職が定期的に交代することはやむを得ないのであろう。今回はちょうど節目に当たり、そのため、直接担当者と面談して質問を投げ掛け、回答を得ることができなかったのは残念であった。CHAdeMO協議会総会に参加した所感と、今回提出していただいた回答書を基に、筆者は次の2つの指針を提案したい。
(1)戦略的普及策の立案
CHAdeMO協議会は、急速充電に関する技術開発と規格策定を担うとともに、充電インフラの普及推進を行う団体である。しかし、日本企業がしばしば直面する「技術で勝っても、ビジネスで負ける」という構造的課題を踏まえるならば、規格普及の戦略性が不十分であれば、市場浸透は限定的となる。外部から観察する限り、現状のCHAdeMO規格の普及政策には戦略的推進力が不足しているように見受けられる。
とりわけChaoJi(日本ではCHAdeMO 3.0)については、規格制定が完了しているにもかかわらず、商業化/導入開始時期に関する明確なロードマップが提示されていない。協議会には自動車メーカー、急速充電器メーカー、認証機関など多様なステークホルダーが参画していることを踏まえると、「20XX年X月より自動車メーカー、急速充電器メーカー双方で導入を開始する」といった戦略的普及策を公表し、PRすることが大切なのではないだろうか。今のままでは何も進まないように思われる。
さらに、アセアン諸国における規格導入の可能性を考慮すると、政府機関/規制当局への働きかけを強化する渉外活動が不可欠である。特に、ChaoJi規格は中国との共同開発である点を踏まえ、同国との協調的アプローチを戦略的に活用することが、ASEAN地域での普及促進に資すると考えられる。
(2)走るAIロボティクスへの対応
近年、中国の新興EVメーカーを中心に、自動車の定義が大きく変わりつつある。従来、自動車は「移動のための機械」であり、エンジン性能や燃費、乗り心地といった物理的な性能が価値の中心だった。しかし、AI(人工知能)技術の急速な進化と電動化の普及により、自動車は「走るAIロボティクス」であるという新たな概念が台頭している。Xpeng、NIO、Xiaomi、Baidu、Teslaなどが代表格である。
この概念は、自動車そのものが知能を持ち、環境を理解し、学習し、ユーザーと対話し、継続的に進化する存在になるという発想である。AIにより自動車が進化し、知能化するようになれば、急速充電器もAI急速充電器になるのは必然であろう。
このように双方が進化する場合、どのような充電形態が望ましいのであろうか。はたまた急速充電器は自動車とどのようなやりとりが必要になるであろうか。中国の急速充電器メーカーでは既にAIを活用した“AI急速充電器”の開発が進展している可能性が高い。CHAdeMO協議会としても、研究課題としてこの領域を取り上げ、研究を促進することをお願いしたい。AIロボティクス化した自動車とAI充電インフラの協調設計は、次の世界標準を形成する基盤モデルになると思われる。
筆者紹介
和田憲一郎(わだ けんいちろう)
三菱自動車に入社後、2005年に新世代電気自動車の開発担当者に任命され「i-MiEV」の開発に着手。開発プロジェクトが正式発足と同時に、MiEV商品開発プロジェクトのプロジェクトマネージャーに就任。2010年から本社にてEV充電インフラビジネスをけん引。2013年3月に同社を退社して、同年4月に車両の電動化に特化したエレクトリフィケーション コンサルティングを設立。2015年6月には、株式会社日本電動化研究所への法人化を果たしている。
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