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自動車産業の新たな競争構図は「フィジカルAIカー」対「エンボディドAIカー」へ和田憲一郎の電動化新時代!(62)(1/3 ページ)

一部の中国新興メーカーを中心に、自動車は「走行するAIロボットである」という新たな概念が生まれている。この視点に立つと、自動車はロボティクスの観点から「フィジカルAIカー」と「エンボディドAIカー」という2つのカテゴリーに分けることができる。今回は、新たなフィジカルAIカーとエンボディドAIカーの競争構図について解説する。

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 最近の自動車関連のメディア報道においては、依然としてパワートレイン技術の分類であるHEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV(バッテリー電気自動車)を中心とした話題が多い。しかし、一部の中国新興メーカーを中心に、「自動車は走行するAI(人工知能)ロボットである」という新たな概念が生まれている。

 この視点に立てば、自動車はロボティクスの観点から「フィジカル(Physical)AIカー」と「エンボディドAI(Embodied)AIカー」という2つのカテゴリーに分けることができると筆者は見ている。今回は、近未来的な視点から、なぜフィジカルAIカーとエンボディドAIカーが競争し始めているのか、その背景と将来像について筆者の考えを述べてみたい。

⇒連載「和田憲一郎の電動化新時代!」バックナンバーはこちら

代表的な2社に見るAI戦略の動向

 近年、中国の新興自動車メーカーにおいて、「自動車は走行するAIロボット」と再定義する概念が生まれている。とりわけ、Xpeng 創業者兼董事長の何小鵬(ホー・シャオポン)氏およびXiaomi 創業者兼董事長の雷軍(レイ・ジュン)氏が代表的であり、自動車産業が直面する本質的な変容を指摘している。両氏が大学においてコンピュータ工学を専攻し、AI技術に関する深い専門知識を有している点も興味深い。

 まずはXpengの取り組みについて述べたい。Xpengは、2026年1月開催のシンガポールモーターショーおよび同年2月開催のインドネシアモーターショーにおいて、多数のAI機能を搭載した新型車「Next P7」を発表するとともに(図1)、ヒューマノイドロボット「IRON」を公開した(図2)。同社はこれらの開発を支える基盤として「フィジカルAIフレームワーク」を構築しており、ロボタクシーソリューション、ヒューマノイドロボット、さらに空飛ぶクルマといった多様なモビリティ領域への応用を可能にするとしている。

図1
図1 XpengはフィジカルAI搭載の「Next P7」を発表[クリックで拡大] 出所:Xpeng
図2
図2 Xpengのヒューマノイドロボット「IRON」[クリックで拡大] 出所:Xpeng

 また、同社董事長の何氏は「AIカーは四輪を備えた最もシンプルなロボットと見なすことができる」と述べ、同社がフィジカルAIカー分野において先導的役割を果たしていると自負している。

 次に、Xiaomiの取り組みについて述べよう。同社はスマートフォンを中心とするエレクトロニクス企業として成長してきたが、近年は自動車事業に本格参入し、AIを中核とする新たなモビリティの構築を志向している。

 同社董事長の雷氏は、自動車産業の将来像を、身体性AIと呼ばれる「エンボディド(Embodied)AI」の具現化として位置付けている。エンボディドAIはロボット工学領域で注目される概念であり、AIが「頭脳」として機能し、物理的な「身体」と結合することで、環境と相互作用しながら高度な知能を発揮する点に特徴がある。雷氏は、この枠組みを自動車に適用することで、車両が高度な知能を備えた実体的存在へと進化すると捉えている。

 Xiaomiは自動運転技術や車載OSの開発を加速させ、2025年にはBEVの第2弾モデルとなる「YU7」を発表した(図3)。YU7には、センサー融合、クラウド連携、マルチデバイス統合といった同社のAI基盤技術が広範に組み込まれており、スマートフォン開発で培った知見が自動車領域へと拡張されている。

図3
図3 Xiaomiの「YU7」[クリックで拡大] 出所:Xiaomi

 また、Xiaomiはヒューマノイドロボット「CyberOne」も公表している(図4)。このロボットは、人間のようなバランス歩行、感情認識(45の感情)、3D空間認識能力を持つ。21の自由度を持ち、手先の器用さを高める開発が進んでいる。

図4
図4 Xiaomiのヒューマノイドロボット「CyberOne」[クリックで拡大] 出所:Xiaomi

 さらに、Xiaomiは2025年11月、自動運転とロボティクスを統合した世界初のAI基盤モデル「MiMo-Embodied」を正式にリリースし、オープンソース化したことで、関係者に衝撃を与えた(図5)。

 MiMo-Embodiedは、自動運転とロボティクス(身体性AI)を統合した世界初の基盤モデルであり、両領域を単一のモデリングフレームワークで実現している。このモデルは、ロボティクスの3つの中核機能であるアフォーダンス推論、タスク計画、空間理解と、自動運転の3つの主要機能である環境認識、状態予測、運転計画のパフォーマンスを同時にコントロールできるとしている。MiMo-Embodiedでは、自動運転とロボティクスに関して、合計29ケースのベンチマークを検証し圧倒的な性能を得たとしている。

図5
図5 自動運転とロボティックスを統合したAI基盤「MiMo-Embodied」[クリックで拡大] 出所:Xiaomi

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