検索
連載

欧州に迫り来るPHEV淘汰の危機和田憲一郎の電動化新時代!(63)(1/3 ページ)

欧州においてPHEV(プラグインハイブリッド車)が重大な転換点を迎えている。欧州委員会がPHEVのCO2排出量算定方法を2025年および2027年の2段階で変更する規制を導入しており、2027年以降は、PHEVのCO2排出量がガソリン車やHEVと同等、あるいは車種によってはHEVを上回るCO2排出量と評価される可能性が高く、環境対応車としての優位性は失われる。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 欧州において、PHEV(プラグインハイブリッド車)が重大な転換点を迎えている。環境NGOなどの指摘を受けて欧州委員会が調査した結果、CO2排出量に関する公称値と実走行時の乖離(かいり)が平均3.5倍に達することが判明した。

 背景には、PHEVの多くのユーザーが充電を行わずエンジン主体で走行している実態がある。このため、欧州委員会は実走行データを重視した規制体系へ移行し、PHEVのCO2排出量算定方法を、2025年および2027年の2段階で変更する規制を導入した。とりわけ2027年以降は、PHEVのCO2排出量がガソリン車やHEV(ハイブリッド車)と同等、あるいは車種によってはHEVを上回るCO2排出量と評価される可能性が高く、環境対応車としての優位性は失われる。今回は、これらPHEVを取り巻く厳しい状況を整理するとともに、今後の展望について筆者の考えを述べてみたい。

⇒連載「和田憲一郎の電動化新時代!」バックナンバーはこちら

PHEVの公称CO2排出量に関する第三者機関からの批判

 発端は、2020年秋に公表された2つの環境NGOからの指摘である。1つは、国際的な非営利の公共政策シンクタンクである国際クリーン交通評議会(ICCT:International Council on Clean Transportation)によって指摘された。ICCTは、2020年9月、中国、欧州、北米における約10万台に及ぶPHEVの実際の使用状況と燃料消費量を分析した結果を公表した。それによれば、PHEVのCO2排出量は、公称値と実走行時の乖離が平均で2〜4倍になったという。ICCTは、内燃機関の出力を下げ、電気のみでの走行距離と充電頻度を増やすことで、PHEVの実燃費とCO2排出量を改善できると提言している。

 もう1つは、ベルギーを拠点とする、欧州最大の交通環境NGOであるT&E(Transport & Environment)による問題提起である。T&Eは2020年11月、欧州で販売されている3車種のPHEVのCO2排出量について、公称値と実走行時を計測し、以下のように多くの懸念点を指摘した。

  1. 現在販売されているPHEVの多くは、CO2排出量が非常に低いことをうたっており、同等の従来型内燃機関車の3分の1以下としている。しかし、今回試験した3車種とも公称値より多くのCO2排出量となっている。最適な条件下でも28〜89%多く排出しており、特にバッテリーが空の状態では、公称値の3〜8倍ものCO2排出量がある
  2. PHEVに関する購入補助金や税制優遇措置を廃止すべきである
  3. PHEVを販売することで、自動車メーカーはEUの自動車CO2排出量基準を満たしやすくなる。しかし、EUが2025年と2030年の目標を見直す際に、この規制緩和を終わらせるべきだ

 なお、T&Eはその後も毎年試験を実施し、2023年の段階では、PHEVのCO2排出量に関して、公称値と実走行時の乖離は約5倍にまで拡大していると主張した(図1)。このようなT&Eの指摘は欧州で大きな反響を呼び、欧州全体でPHEVの環境性能に対する疑念を一気に広げることとなった。

図1
図1 PHEVのCO2排出量に関する公称値と実走行時の乖離[クリックで拡大] 出所:T&E

欧州委員会によるPHEVに関する規制改正

 環境NGOなどの指摘を受けて、欧州委員会は2023年にPHEVに関して幾つかの規制改正を行っている。主な内容となるのが、PHEVにおけるユーティリティーファクター(以下、UF)に関する定義および試験方法に関する規定の改正である。

 UFとは、全走行距離のうち電動走行が占める割合を統計的に推定するパラメータである。2023年の改正では、従来採用されてきた「統計モデルに基づく固定値」としてのUFを廃止し、「車載燃料消費量監視装置(OBFCM:On-Board Fuel Consumption Monitoring)によって取得される実走行データに基づく値」へと変更した。

 さらに、試験方法についても従来のWLTP(Worldwide harmonized Light vehicles Test Procedure)に対し、より実態に近い電動走行割合を反映する方法とした。

 なお、UFの適用方法の変更は、2段階で次第に厳しくする方法を採用した。第1段階は、2025年1月以降に発売される新型車(既存車は2026年1月)を対象とし、第2段階は2027年1月以降の新型車(既存車は2028年1月)から適用される。2段階方式が採用された背景として、自動車メーカーに対する技術的/運用的な準備期間の確保、OBFCMデータの十分な蓄積の必要性、ならびに市場への影響を段階的に緩和する配慮があると考えられる。また年末には電動走行に応じたUF特性曲線を制定している。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る