140年企業はAIをどう組織改革に生かしたのか、組織スピード4倍の舞台裏:カクイチの組織文化DX(前編)(3/3 ページ)
多くの製造業が組織間の縦割り構造による、判断スピードの遅延や部分最適化に悩んでいるのではないだろうか。こうした課題に対し、情報基盤の刷新と組織文化改革を進め、その上でAIを組織変革に生かして成果を上げているのが、ガレージや樹脂ホースの製造などを手掛けるカクイチだ。AI時代に勝てる組織構築を進めるカクイチの組織文化改革について前後編で紹介する。
共通基盤の非構造データをAIで読み解いて活用
ここまで紹介した3つの改革は、結果としてAIを活用するための土台づくりにもなった。カクイチでは、全社員が同じ情報基盤、同じデータでつながる環境を生かし、これらにAIを組み合わせることで、さらなる価値創出につなげていく考えだ。
「2018年に改革に取り組み始めてから、8年間の間に58万件を超える現場の声がSlack上に集まっている。これらを生かすことで、さまざまな暗黙知の活用などが行えるようになる。データの蓄積が進んだことで、ビッグデータ分析により論理的推論を立てられるようになる。それをベースに仮説の実践を行い、因果関係を読み解きながら、さらに課題の本質に迫る『進化した仮説』に近づけていく。これらを共有することでさらなる進化が可能だ」と奥田氏は考えを述べる。
現在、非構造データに対するAI活用の具体的な取り組みの1つが、Slack上のデータ分析による、各個人の人事評価の参考資料作成だ。カクイチでは、2025年に人事評価を刷新し「個人業績結果」「活力活動量」「変革改善挑戦」「チームビルド環境、和」「学習成長意欲」「顧客との関係構築」「他への貢献」の7軸で評価を行う仕組みとなっている。
これらの指標に合わせて、各個人のSlack上のやりとりを分析し、参考資料の策定を行えるようにしたという。「日常の業務プロセスは基本的にはSlackでのやりとりで把握できるため、これらを分析することで、日々の活動を把握できる。これらに業績などを組み合わせることで、ある程度参考にできる資料は作成できる。ただ、あくまでも参考資料として使い、AIに評価そのものをさせるようなことはしない」と人事改革を推進するカクイチ CX推進グループ 財務・総務マネジメント チームリーダーの村仲巧氏は述べている。
もう1つの取り組みが、営業商談にAI文字起こしサービスNottaを活用し、商談内容を文字情報として残し、それを分析することだ。「営業全員のNottaを配布し、売れる商談と売れない商談の差異を分析している。まだ使用し始めて半年なので具体的な成果はこれからだが、徐々に商談の傾向なども見えてきた。例えば、ベテランの売れる商談では、顧客に対し喜びの感情が声に表れているが、そうでない商談では顧客に対し、悲しみなどネガティブな感情が声に出ているという結果が出ている。これらをさらに掘り下げ、会話の転換点や気付きなどを掘り下げ、組織としての知見としていく」と田中氏は語っている。
今後は、さらにAIの適用領域を広げ、新たな知見の獲得を進めていく方針だ。さらに先のフィジカルAI時代にも備えるため、ヒューマノイドロボットについても活用する計画で、2027年4月にはヒューマノイドを入社させるために開発を進めているという。
田中氏は「Slack経由でデータを残すと決めたときは、AIでの活用などを想定していたわけではないが、結果的にオープンな形で全ての情報を残していることになり、組織に知見が全て残せる環境ができている。これを生かすことで組織としてさらに進化できると考えている。カクイチにとっての財産である『現場の知』を生かしていく」と語っている。
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