EVモーター小型化に役立つ絶縁被覆材、有機溶剤は不要:人とくるまのテクノロジー展2026
EVで使用するモーターの小型/高効率化が求められている。こうした中、三菱ケミカルは「人とくるまのテクノロジー展 2026 YOKOHAMA」で、「押出成形」によってマグネットワイヤに絶縁材を薄膜でコーティングできる新素材を紹介した。
三菱ケミカルは、「人とくるまのテクノロジー展 2026 YOKOHAMA」(2026年5月27〜29日、パシフィコ横浜)に出展し、開発品の「マグネットワイヤ用絶縁被覆材」や「高放熱絶縁樹脂シート」を披露した。
被覆技術の検証は完了
電気自動車(EV)のモーターでは、エネルギー変換効率の向上と小型/軽量化が求められている。一方、モーター内部のマグネットワイヤ(巻線)には従来、ステーターのコイルに液体状の絶縁樹脂(ワニス)を含浸/塗布し、熱や紫外線で硬化させる工程「ワニス法」が使用されていた。
しかし、従来のワニス法では製造工程において有機溶剤が使用されるため、揮発性有機化合物(VOC)の排出量やカーボンフットプリントの増大が課題となっている。こうした課題を解決する製品として、同社はマグネットワイヤ用絶縁被覆材を開発した。
マグネットワイヤ用絶縁被覆材は、200℃での部分放電開始電圧が従来品と比べて1.5倍だ。同材料は、絶縁層を薄膜化できるため、モーターの小型化と高占積率化に貢献する他、金属密着性に優れた熱可塑性樹脂で単層被膜が行える。
同社の説明員は「マグネットワイヤ用絶縁被覆材は従来のワニスを用いず、『押出成形』によって薄膜コーティングを行う新しい被覆材だ。製造工程で有機溶剤を使用しないため環境負荷が低く、カーボンフットプリントの削減に貢献する。被覆技術の検証は完了しており、今後はパートナー企業と連携して実際のモーターへの実装と検証を進める」と話す。
モジュール内部のセラミック絶縁基板を不要に
1つのパッケージに2つのIGBT素子(スイッチ)を内蔵したパワー半導体モジュールである「2-in-1 IGBT」などの従来のパワーモジュールは、内部に高い絶縁性を持たせるため、セラミックを用いた放熱基板が使用されてきた。
この構造は、薄いセラミック板を2枚の銅板で挟み込み、さらにそれを銀シンタリング(焼結接合)などのプロセスで接合した多層構造となる。しかし、セラミック基板は高価であることに加えて、熱膨張差などにより「反り」などが発生するという課題がある。
そこで同社は、独自開発の特殊窒化ホウ素フィラーとエポキシ樹脂を配合した高放熱絶縁樹脂シートを開発した。同シートは、パワーモジュールと冷却プレートを接着/固定するための、高い絶縁能力を備えた樹脂シートだ。パワーモジュールと冷却フィンを接合した直接冷却構造体向けの製品で、放熱/絶縁/接着の3機能に対応できるため、トータルコストの削減を図れる。
同社の説明員は「高放熱絶縁樹脂シートが、これ自体が絶縁機能を担うため、従来モジュール内部に必要だったセラミック絶縁基板が不要になる。セラミックなどの部材が減ることで全体のコストダウンが図れることに加えて、熱抵抗が下がることで放熱性能も向上する」と述べた。
高放熱絶縁樹脂シートのラインアップは、放熱基板(IMB)向けの「SH-A206」や、モジュール貼り合わせ向けの「SH-A204」と開発品の3種類となる。
SH-A206の熱伝導率(Typical、ASTM D5470)は16.5W/mKで、絶縁耐圧(Typical)は8kV AC、電気/電子機器や自動車部品に使用されるプラスチック材料の難燃性を評価する国際的な規格「UL94」で難燃グレード「V-0」を取得している。
SH-A204の熱伝導率は15W/mKで、開発品の熱伝導率は18W/mK、両製品ともに、絶縁耐圧は8kV AC、UL94で難燃グレードを取得予定だ。既に、SH-A206とSH-A204は販売されている。
「パワーモジュールのメーカーであるインフィニオン・テクノロジーズは現在、内部に絶縁基板を持たない新しいタイプの2-in-1 IGBTモジュールの開発を進めており、三菱ケミカルはその開発プロセスにおいてこの高放熱絶縁樹脂シートを提供している。このモジュールの基礎開発は完了しており、発売後は当社の高放熱絶縁樹脂シートがオプションとして提案される可能性はある」と同社の説明員はいう。
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