「服のデジタルパスポート」 年間24億着が未処理廃棄のアパレル産業で実証:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
NTTドコモビジネスとCYKLUSは、アパレル製品の履歴や環境指標を一元管理するDPPの共同実証実験を開始した。衣類の大量廃棄問題の解決に向け、2027年秋の商用化と循環型ビジネスモデルの確立を目指す。
製品の歩みを刻むデジタル証明書
この連携を通じてNTTドコモビジネスとCYKLUSが共同で開発したのが、アパレル分野におけるDPP導入の仕組みだ。DPPとは、製品の原材料調達からリサイクルに至るまでの履歴を記録し、サプライチェーン全体の透明性を高めるデジタル証明書だ。製品に取り付けられた2次元コードを起点とし、ユーザーや製品ブランド、修理事業者が製品情報を共通で参照できる。製品仕様や素材構成といった基本情報に加えて、ライフサイクルアセスメントに基づくCO2排出量や水使用量、修理案内、過去の修理履歴、リサイクルなどの各種窓口情報が一元管理できる。
また、DPPには製品開発の背景やブランドの思いを「ストーリー」として表示する。CYKLUS 代表取締役の平田健夫氏は、「製品がユーザーの手に届くまでの過程や情報を可視化することで、製品に対する共感や愛着を育み、長く使い続けることを支えたい。単なるデータ管理の枠を超え、修理やリユースなどの循環型サービスとユーザーを適切に接続し、社会全体における資源循環の推進を目指す」と狙いを語った。
使用するICT基盤には、NTTドコモビジネスの再生資源循環プラットフォーム「CEMPF(Circular Economy Management Platform)」を採用した。CEMPFは、資源循環に必要なデータを一元管理し、サプライチェーンにおけるトレーサビリティーの確保や認証対応などの機能を備えた基盤だ。NTTドコモビジネス スマートインダストリー推進室 主査の青砥正英氏は、「今回の実証ではアパレル分野の要件に合わせてシステムのカスタマイズを行った。今後は鉄鋼やICT企業など、多様な業界でのプラットフォーム展開を予定している」と語った。
約500製品に2次元コードを実装
実証は2026年5月から11月にかけて実施する予定だ。製品ブランドとしてゴールドウインと4c studios、修理などの循環型サービス事業者としてミヤモリとCYKLUSが参画する。期間中は合計400〜500の対象製品に2次元コードを実装し、システムの実運用における事業者のデータ入力負荷や運用フロー、情報提供に対するユーザーの受容性を検証する。
実際の運用プロセスでは、ブランド側が製品の基本情報や環境指標を初期入力し、ユーザーは製品の着用ストーリーや使用期間を記録する。リペアなどの循環型ビジネス事業者は修理内容の情報を追記することで、CEMPFに製品のライフサイクルデータが蓄積される。一元管理されたこれらの情報は、製品に取り付けられた2次元コードからDPP画面へアクセスすることで、次に関わるユーザーや事業者が製品の履歴を透過的に確認できる仕組みとなっている。
実証における各社の役割として、CYKLUSはDPPの実運用プロセスの構築とサービスとしての成立性を評価する。その他の参画企業は、情報開示がユーザーの理解促進やブランド価値の向上に与える影響を検証し、社会実装に向けた課題の洗い出しを行う。
アパレルブランド「THE NORTH FACE(ザ・ノース・フェイス)」の日本向け企画などを手掛けるゴールドウイン ゴールドウイン事業本部 ゴールドウインマーケティング部長の蓑輪光浩氏は、「当社は欧州や上海などに店舗を構え、グローバル展開を加速している。欧州市場での環境対応はマストであるが、単なる規制対応や事業戦略にとどまらず、製品の長期利用に向けた本質的な取り組みとして期待している」と語った。
第2弾実証を経て2027年秋ごろに商用化予定
NTTドコモビジネスとCYKLUSは、今回の実証実験の成果を踏まえ、2027年2月以降に第2弾となる実証実験を予定している。次回は検証対象をさらに拡大し、リユースやリサイクルを担う事業者など、より広範なエコシステムとの連携やデータ接続を検証していく。最終的なゴールとして、2027年秋ごろにおけるアパレル向けDPPの商用化と社会実装を見据えている。
平田氏は「情報提供という価値に加えて、修理やメンテナンス、リユースなどの循環型サービスとつなぐことで、社会全体におけるサーキュラーエコノミーの拡張や、適切なリサイクルサービスへの接続を支えていく」と展望を語った。将来の欧州エコデザイン規則なども視野に入れながら、製品の長期利用を支える循環型ビジネスモデルの確立を図る方針だ。
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