続・なぜ設計プロセスで「完璧な設計」ができないのか:製品リコールを生む品質不良の原因と対策(4)(3/3 ページ)
設計品質と量産品質の構造を整理し、品質不良が生まれるメカニズムを体系的に考察する連載「製品リコールを生む品質不良の原因と対策」。第4回では、設計プロセスで「完璧な設計」が実現できない理由について引き続き解説する。
品質基準/システムが未成熟の対応:市場不良を解析しノウハウを蓄積する
実際に製品を市場に投入すると、市場不良は一定数発生するため、それらのデータを収集し蓄積していく必要がある。
収集すべきデータについては、「市場不良 データ 種類」などでWeb検索すれば、解説と併せて知ることができる。
そして、データの収集→蓄積→解析/整理→設計へのフィードバック(既存製品の設計修正)→設計品質基準書の更新(試験項目の追加、試験内容の修正)という一連の運用システムを構築してほしい。
品質基準/システムが未成熟の対応:専門家からアドバイスをもらう
専門家からアドバイスをもらうのが、一番早い方法だ。設計する製品に近いカテゴリーの製品設計に携わった経験のある専門家に相談するのがよい。
ただし、試験項目には輸送試験や使用環境温度試験など、どのような製品にも共通する試験が数多くある。製品は必ず組立メーカーから輸送される上、使用環境温度も製品ごとに大きな違いはないからだ。
つまり、全く同じ製品の設計に携わった専門家でなくても、類似製品の経験があれば問題ない。ODM(設計製造委託)メーカーを選定する場合も同じである。
次のカテゴリーの製品は、使用方法や使用環境が類似しているため、類似製品といってもよいものが多い。
- ハンディー製品
- キッチン用品
- キャンプ製品
また、どのような試験を行うべきかを洗い出す手法として、「FMEA」がある(参考記事[4])。
製品設計の経験がある設計者は、ユーザーに危害を加えやすい設計になっていないか、壊れやすい設計になっていないかを常に考えながら設計している。そのため、初めて設計する製品であっても、FMEAで確認すべき項目を的確に洗い出し、必要な試験項目も容易に挙げられる。
ODMの問題
現在、日本で販売されている比較的安価な家電製品やキッチン家電、ガジェットなどの多くは、日本ブランド製品であっても中国製である。
中国製の日本ブランド製品には、以下の2通りがある。なお、どちらもカートンなどには「日本ブランド名称」と「Made in China」が表示されている。
1)日本ブランド製品の企業が設計し、部品調達と組み立てを中国メーカーに依頼
2)日本ブランド製品の企業が、中国メーカーに設計と製造(部品調達と組み立て)を依頼
上記の2)が、中国へのODMである。
例えば、日本ブランド製品の企業が、中国でハンディーファン(携帯扇風機)を製造しているODMメーカーに連絡を取り、そのODMメーカーが持つ既製品のハンディーファンに対して、デザインや機能を少しだけアレンジした設計と製造(部品調達と組み立て)を依頼するようなケースだ。
日本ブランド製品の企業側に設計スキルや製造(量産)スキルがない場合、このような形態を取ることが多い。しかし、この場合だと、どのような試験を行ったか教えてもらえない場合があり、教えてもらえたとしても、それが妥当であるかどうかの判断がつかないという問題がある。これについては、次回以降の連載で詳しく説明する。 (次回へ続く)
筆者プロフィール
オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)
上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。
◆ロジカル・エンジニアリング Webサイト ⇒ https://roji.global/
◆著書
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