AIでOTデータと匠のスキルを融合、日立はいかに熟練者の思考を再現したか:製造現場向けAI技術
日立製作所は、医薬品/化粧品の国際展示会「第28回 インターフェックスWeek 東京」において、設備保全支援AIエージェント「現場サポートAIナビ」による設備故障対応の迅速化や作業者の負荷軽減を訴求した。
日立製作所(以下、日立)は、医薬品/化粧品の国際展示会「第28回 インターフェックスWeek 東京」(2026年5月20〜22日、幕張メッセ)の構成展の1つである「インターフェックスジャパン 医薬品 化粧品 製造展」において、設備保全支援AIエージェント「現場サポートAIナビ」による設備故障対応の迅速化や作業者の負荷軽減を訴求した。
OTデータとOTスキルで熟練者の思考プロセス再現
製造業においては、深刻な人手不足や熟練技術者の退職などによって、これまで積み重ねてきた技能の継承が危ぶまれている。AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の高度な技術の導入が期待される一方で、製造現場ではノウハウの属人化が根強く残っている。
そこで日立が着目したのは、熟練者の代替となるAIエージェントだ。特に、現場サポートAIナビでは図面情報などの客観的な事実と論理的な推論を掛け合わせた独自の活用法を取った。
製造現場には、過去の設備保全の記録が残っている。記載レベルが設備によってばらばらで、記録が残っていても活用されておらず、個人の経験に依存しているケースも多い。そういった課題に対して、日立ではAIエージェントを使った効率化の検証を進めた。
ただ、従来のAIエージェント活用では、過去の保全記録などを読み込ませ、RAG(検索拡張生成)により現在の障害状況と一致した原因および対策を出力する形をとっている。「この方法では、説明書に記載されている事象や過去に発生した同一事象への対応は可能だが、原因が複雑な類似故障、新規故障に対して正しい原因や対策を提示することが困難だ」(日立製作所の説明員)
日立では、AIを使ったOT(制御技術)データの単なる検索ではなく、そこに熟練者のOTスキルをデジタル化し、掛け合わせることでOTナレッジを創出するアプローチをとった。
OTスキルとは、熟練者の思考の流れを指す。熟練者は設備に障害が発生した際に、障害を把握し、制御構造を分析して、原因の特定や対策の立案という思考プロセスをたどる。つまり、OTデータを利活用し、障害情報に基づいてOTスキルを用いて分析することで、原因を洞察している。
この思考プロセスに対して、日立はシステム理論に基づいた事故モデルのSTAMP、制御構造に着目した原因分析手法のCASTを組み合わせたSTAMP/CASTをAIに読み込ませた。「STAMP/CASTは、システム全体のつながりを俯瞰し、複数のポイントを連鎖的に探索するため、類似故障、新規故障を考慮した原因分析が可能になった」(同説明員)。
ダイキン工業への導入事例では一般的な保全技術者に匹敵する90%以上の正答率となった他、回答までの時間も10秒以内という人より短い時間で回答が得られたという。
現在の利用イメージとしては、障害が起きた設備などの情報を人が入力すると、読み込んだOTデータを基にAIエージェントが回答する形となる。日立では現在、1設備からの適用検証サービスを提供している。
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