ダイキンと日立、AIエージェントによる工場の設備故障診断で対応時間半減へ:製造業IoT(1/2 ページ)
ダイキン工業と日立製作所は、ダイキンの業務用空調機器を生産する堺製作所臨海工場で、工場の設備故障診断を支援するAIエージェントの実用化に向けた試験運用を開始した。
ダイキン工業(以下、ダイキン)と日立製作所(以下、日立)は2025年4月22日、ダイキンの業務用空調機器を生産する堺製作所臨海工場(大阪府堺市)で、工場の設備故障診断を支援するAIエージェント「設備故障診断AIエージェント」の実用化に向けた試験運用を開始したと発表した。今後、ダイキンの国内工場全拠点に導入を進める他、海外工場についても2025年10月に米国とインドに展開する計画だ。
ダイキンと日立は2017年に熟練技術者の技能伝承を支援する次世代生産モデルの確立に向けた協業を発表して以降、スマートモノづくり領域で共創を推進してきた。今回の設備保全を対象とした新たな技術開発については2021年から協議を開始し、2023年に生成AIが登場したことで、これらを採用した新たなやり方を検討して、開発につながったという。
設備保全の要因診断をAIで容易に
今回、ダイキンと日立の共創により開発したのは、自動化設備の保全領域を対象とし、AIの活用により設備故障が起こった際により早く要因を導き出し、対応速度を早められるという技術だ。
製造現場では、人手不足が進む中で自動化が進んでいる。その中で画像の活用など設備の高度化が進んでおり、設備保全に求められる知識や経験はより広く、深いものが必要となっている。一方で、ダイキンの生産拠点がグローバルに広がる中で、技術レベルの高い保全技術者の育成が追い付いておらず、これらを支援する仕組みが必要となっていた。
ダイキン 生産技術センター工場DX技術開発グループ 工場DX技術開発グループリーダー主任技師の浜靖典氏は「設備故障による対応に必要な時間を調べると要因診断が46%と非常に大きな比率を占めている。これらを削減できれば作業対応時間を半減できる」と述べる。
今回、両社の共創で実現した設備故障診断AIエージェントは、生成AIとRAG(Retrieval Augmented Generation、検索拡張生成)などを活用し、設備の故障原因と対策を推定し、現場技術者にすぐに回答するというサービスだ。タブレット端末などを手にした保全技術者が、生産設備を点検する過程でポンプやバルブなどの故障を発見したときに、設備故障診断AIエージェントは、その原因と対策を保全技術者に提示する。原因や対策の推定精度は90%以上で、10秒以内に回答を得られるようになった。「一般的な保全技術者と同等の能力となっている」とダイキン 浜氏は説明する。
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