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物体の柔らかさや粘り気が視覚で分かる!? NTTが“視覚で質感を伝える”技術を開発VRニュース

NTTは拡張現実環境において、手の動きに応じて変形する仮想対象を用い、柔らかさや粘り気といった質感を非接触で伝える錯覚手法を考察したと発表した。

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 NTTは2026年5月12日、拡張現実(AR)環境において、手の動きに応じて変形する仮想対象を用い、柔らかさや粘り気といった質感を非接触で伝える錯覚手法を考察したと発表した。本稿では同日に東京都内で開催した「『NTT コミュニケーション科学基礎研究所 オープンハウス2026』内覧会」における、AR技術デモンストレーションの内容を踏まえて、技術内容を紹介する。

 同研究により、仮想空間で対象物を押し込む際の空間変形範囲が柔らかさの感じ方に影響し、指の動きに伴う対象物の伸びの長さが粘り気の感じ方に関わることが判明した。従来はマウスやコントローラーといった装置が必要だったが、カメラで取得した手の動きをディスプレイ上に表示し、変形パラメータ(空間変形範囲や伸びの長さ)を制御することで、仮想対象の操作と質感提示を実現している。展示会場では球体を用いた柔らかさの錯覚手法デモンストレーションと、粘り気の錯覚手法デモンストレーションをそれぞれ披露した。

柔らかさと粘り気の錯覚手法
柔らかさと粘り気の錯覚手法[クリックして拡大] 出所:NTT

 柔らかさの錯覚手法デモンストレーションでは、カメラで指先の位置や動きをトラッキングすることで、画面上に表示されている物体をどの程度変形させるかを決めていた。画面の中央付近に球体を配置し、トラッキングした指先に黒点を表示させ、黒点の追従具合と球体の変形具合によって物体の柔らかさを錯覚できる。

会場で披露した「柔らかさの錯覚手法」のデモンストレーションの様子[クリックで再生]

 NTTは柔らかさの評価実験を実施し、仮想対象が針状の物体によって押し込まれる映像から柔らかさ知覚に影響する要因を調査した。これにより、柔らかさの知覚は押し込み量だけではなく、空間変形範囲に強く依存し、両者の相互作用によって決まることが判明した。

 このような結果に基づき、空間変形範囲と押し込み量を組み合わせて制御することにより、拡張現実環境における仮想対象の柔らかさの感じ方を操作可能であることが判明した。この実験結果の内容がデモンストレーションに反映されている。

柔らかさ評価試験の詳細
柔らかさ評価試験の詳細[クリックして拡大] 出所:NTT

 粘り気の錯覚手法デモンストレーションでは、指先の動きに応じて伸縮する仮想対象を指の間に表示し、指先を離した際に対象物が伸びてから切れるまでの距離を変えることで、粘り気の強さを感じ取れるといった内容であった。

会場で披露した「粘り気の錯覚手法」のデモンストレーションの様子[クリックで再生]

 このデモンストレーションには、NTTが実施した粘り気の評価実験の内容が反映されている。同実験では拡張現実環境において、指の動きに応じて変形する仮想対象を用い、粘り気知覚に影響する視覚要因を調べた。実験の結果、指の間に表示した対象物のちぎれ距離が長いほど粘り気を強く感じることが判明した。この傾向は実験室環境とスマートフォンを用いたオンライン環境の双方で確認され、対象物の伸び続ける長さが粘り気の感じ方の主要な視覚手掛かりであることが明らかになった。

粘り気の評価実験の詳細
粘り気の評価実験の詳細[クリックして拡大] 出所:NTT

 今回の研究から生まれた技術により、専用の触覚デバイスを必要とせず、一般的なPCやスマートフォンを通じて広範囲のユーザーに錯覚体験の展開が可能である。これにより、食品や衣料品などの質感が購買判断に大きく影響する分野において、ECサイト上で柔らかさや質感を確認できるようになるといった、体験価値の向上につなげることが可能だ。

 今後は、実サービスへの適用を見据え、利用環境やデバイス差、通信遅延がユーザー体験に与える影響を確認し、実際の購買行動における有効性の評価を行っていく。また、産業分野との連携を通じて、具体的な利用シナリオに基づく実証を進め、社会実装に向けた検討を進めていく。

 なお、今回の発表内容について、NTT西日本 QUINTBRIDGE・PRISM内(大阪府大阪市都島区)で開催予定のイベント「NTT コミュニケーション科学基礎研究所 オープンハウス2026」(会期:2026年5月20〜22日)でデモンストレーション展示を予定している。

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