なぜオムロンは農業の“作業”ではなく“判断”の自動化を目指すのか:FAインタビュー(2/2 ページ)
世界の人口は増加しており、2050年には100億人を突破すると見られている。人口増加に伴う食料需要の高まりに対して供給力の不足が懸念されている。そうした中、オムロンはこれまで培ったセンサーやコントローラーなどのFA技術を活用した“アグリオートメーション”に挑もうとしている。新事業の担当者に話を聞いた。
センシングロボットでキウイ全数把握、データドリブン農業へ
従来、農業者側は農園の限られた一部の区画において、人の手で花のつぼみや果実の数を集計し、それを全体に当てはめてその年の収穫量などを予測してきた。広大なキウイ農園全体を逐一観察するわけにはいかないからだ。ただ、サンプリングした区画と他の区画の生育状態が同じとは限らないため、予測した収量と実際の収量の乖離などが起きていた。「実際の数量と20%近い誤差が出たケースもあった。もし売り上げに対して20%の誤差があれば、かけるべき人件費などのコスト感覚は全く違ってくる」(オムロンの岡田氏)。
そこでオムロンは、複数のカメラを搭載したセンシングロボットに農園全体を半日程度かけて走行させ、得られた画像データをAI(人工知能)を含むソフトウェアによって分析し、太陽光などの外乱がある状況でもつぼみや果実などの数量を高精度に把握することに成功した。
花やつぼみの認識率は日中で約91%、夜間で約96%、実の認識率は日中で約90%、夜間では約99%、病害(かいよう病)に対しては認識率は約93%に上ったという。また、スズキの柔軟性と耐久性で安定したロボットの足回りによって不安定な土壌の自動走行も可能にした。
これによって、大粒で甘い実を収穫するために、実りすぎた果実を収穫前に間引く摘果(てきか)の作業においても、実際のデータとして進捗具合や作業品質などを把握。これまで勘やコツに頼っていた作業を、高品質のデータを基に進められるようになった。
オムロン インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部 新ドメイン事業開発センタ 農業ドメインGr長の加藤悠太郎氏は「広い農園を精度よく認識するためには、レンズや照明などのハードウェアの組み合わせに加え、データを画像処理してAIで検出するまでを一気通貫でできることが大切だ。その点では、われわれの既存事業の組織や人材を強みとして活用できる」と話す。キウイの実を検出するAIのアルゴリズムや、複数カメラで重なる視野角を自動的に除去するAIのアルゴリズムなどは、今回のために新たに開発した技術だという。
カメラなどのハードウェアはオムロン製を使用する。スマートフォンのカメラ機能の活用も検討されたが、「FA用のカメラはより細かなパラメーターの設定ができる。アルゴリズムに頼るだけではなく、ハードウェアとしても最初から鮮明な画像を得られるようにこだわっている」(加藤氏)。
製造現場では、IoT(モノのインターネット)活用でデータは得られるようになっても、それを具体的な改善までつなげていくことが難しい。加藤氏も「現場のデータを取得するだけではなく、そのデータを意思決定に使えるような形で提示することが重要だ。センシングと、意思決定に使えるように見える化するまでがわれわれの強みとなる。いかにユーザー自身でソリューションを使いこなしてもらえるようにするかがカギとなる」と話す。
ただ、オムロンでは農業そのもののノウハウを持っているわけではないため、具体的なデータの活用方法に関しては、栽培コンサルタントとの提携も構想する。実際に、PoCの段階からそういった専門家の協力を得ている。
広大な農園を走行して全体をセンシングする作業は、収穫まで何回も行い、その都度意思決定を支援できるようにする。その効果は長短2つの時間軸であるとする。「長い時間軸では、収穫量などをより正確に見通すことで、その年の売上規模を把握し、しっかりとした経営計画を立てて無駄なコストを抑制する。短い時間軸では、摘果などの作業が今どこまで進んだのか、いつまでに終わらせればいいのかなどを把握でき、しっかりとした作業計画が立てられるようになる」(岡田氏)。
近年は収穫作業の自動化が注目されているが、作業速度や精度で課題があると見ており、「われわれもいずれは狙っていくが、今実装可能な技術で大規模農場をサポートするには、管理できない広いフィールドを管理できるようにすることだ」(岡田氏)。
露地栽培での実証が進んでおり、具体的な時期は未定だが市場投入も視野に入っているという。その他、施設栽培、植物工場においてもPoCを進めている。大規模農家をターゲットに、2030年に国内外で3000haへの導入を目指す。
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