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商社がなぜ野菜作り? データドリブンな植物工場事業モデルで目指す社会課題解決スマートアグリ(1/3 ページ)

RYODENが新規事業の1つとして取り組むスマートアグリ事業。商社がなぜ植物工場経営に進出したのか、どのような事業構想を抱いているのかを聞いた。

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 半導体や工場自動化システムなどの商社として長く事業展開してきたRYODEN(前 菱電商事)が、新規事業の1つとして取り組んでいるのがスマートアグリ事業だ。2022年にはRYODENの連結子会社であるブロックファームが静岡県沼津市にブロックファーム植物工場を開設した。

 なぜ植物工場経営に進出し、どのような事業構想を抱いているのか、RYODEN グリーンシステム事業本部 スマートアグリ事業部 執行役員 事業部長でファームシップ 代表取締役の新田貴正氏らに話を聞いた。

安定的な生産や作業の自動化が可能な植物工場

 日本の農業は大きな転換期を迎えている。産業構造の変化や少子高齢化の進展で、農林水産省の統計によれば、2020年の日本の総農家数は174万戸となり、2000年の312万戸に比べて半減している。15歳以上で農業を主な仕事とし、自営している基幹的農業従事者の平均年齢は2000年の62.2歳から2022年には68.4歳に上昇した。

 そういった中で、将来的に野菜などを安定供給する1つの方法として注目されているのが植物工場だ。空調や照明などをコントロールした屋内環境で、天候不順などの外部の影響を排除して安定的に収穫することができ、作業も機械化や標準化が可能だ。

 RYODENでは屋内栽培用のLED照明の開発から植物工場向け事業に取り組み始めた。それまでのFAシステムや冷熱システム、電子デバイス事業などで培ったノウハウを生かし、40フィートコンテナ型植物工場を開発し、2017年にはスマートアグリ事業推進部を立ち上げた。さらに、植物工場で生産された野菜の流通、販売に強みを持つファームシップと2019年に資本、業務提携を結んだ。

 その後、植物工場の開発支援や機器導入、施工管理などを一括して手掛ける形で100億円以上を受注した。新田氏は「植物工場向けの専用製品はなかったので、全て自分たちで製作した。コンテナ型植物工場でIoT(モノのインターネット)システムの検証をし、専用のLEDや自動機も設計、植物工場の仕組み自体を構築した」と語る。


静岡県沼津市に構えるブロックファーム植物工場[クリックで拡大]出所:RYODEN

電気代高騰は大きなコスト増に直結、価格競争も発生

 ただ、植物工場を巡る事業環境は構想当初とは異なっていた。通常、植物工場はコストの3割が電気代に費やされるとされ、昨今の電気代の高騰は大きな負担に直結する。消費者は価格の変動に敏感で、気候が安定すると大量に供給される露地野菜との価格競争もあった。

 それでも、「農家の高齢化が進み、いずれ現状の供給体制が成り立たなくなる。これまでノウハウを蓄えることができており、植物工場の必要性は必ず高まり、社会的課題の解決に貢献できる。日本の植物工場技術は世界的に進んでおり、海外市場もある」(新田氏)と、植物工場の仕組みを外部に提供するビジネスモデルを転換し、2022年にほうれん草など葉物野菜を量産する自らのブロックファーム植物工場を開設した。これまで蓄積してきたノウハウを注ぎ込み、植物工場の経営を軌道に載せ、自ら事業としての可能性を示す側に回ったのだ。


ブロックファームの特長[クリックで拡大]出所:RYODEN

 敷地面積2万m2、延床面積8000m2。ブロックファーム植物工場では徹底的に省エネルギー化を進めた。全量自家消費の太陽光発電を屋根に取り付け、消費電力の約20%を賄えるようにした。「植物工場はLED照明を使うことで熱を出し、それをエアコンで冷やすことになるため効率的ではなかった」(新田氏)ことから、新開発の熱還流環境制御アルゴリズムと、栽培手法との組み合わせにより大幅な省エネを実現した。

 各所に設置したセンサーによりエリアや栽培物に合わせて精緻な環境制御を図り、空調電力を最適化するなど、従来比で約50%の消費電力を削減した。また、行政と連携して農地を活用することで地代も大きく抑制した。

 次に植物工場でどのように野菜が作られているのかを紹介する。

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