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燃料電池とは何か?燃料電池と構成材料の基礎知識(1)(3/3 ページ)

本連載では、水素を燃料として発電する「燃料電池」について、基本事項から技術開発動向までを、技術系の方でなくても理解できるように解説していきます。第1回では、燃料電池の発電原理や発電効率について説明します。

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5.燃料電池の発電効率

 燃料電池が発電装置として期待される理由の1つとして、理論発電効率が高いことが挙げられます。そこで、燃料電池の理論発電効率がどの程度なのかを説明していきます。

 まず初めに、(4)の反応で液体の水が1mol(モル)生成する時に発生するエネルギー(エンタルピー変化:ΔH)は、次の通りです。

(7)H2+1/2O2→H2O ΔH=−286kJ/mol

 エンタルピー変化が負になっているのは、反応後のエネルギー状態が反応前のエネルギー状態よりも低くなるためで、エネルギーが外部に放出されることを意味します。

 エネルギー量を表す「J(ジュール)」がどの程度なのかイメージしにくいと思います。例えばコンビニのおにぎり1個(100g程度)を地球上で1m引き上げる時に必要なエネルギーがおよそ1Jに相当します。「1mol」の水とは、アボガドロ定数(6.022×1023/mol)の数だけ水分子が集まった量に相当します(約18g)。

 それでは式(7)のΔH分のエネルギーを直接電気エネルギーとして利用できるのかというと、実はそうはなりません。ここで下の式で表されるギブズエネルギー変化(ΔG)を考える必要があります。ちなみにギブズエネルギーは、米国の科学者であるWillard Gibbs(1839−1903)によって定義されました。

(8)ΔG=ΔH−TΔS

ΔG:ギブズエネルギー変化(J/mol)

ΔH:エンタルピー変化(J/mol)

T:絶対温度(K:ケルビン)

ΔS:エントロピー変化(J/K)

 式(8)は一定温度/一定圧力で化学反応が進行する時のギブズエネルギー変化を表します。式中に「エントロピー変化」という項がありますが、これは図4に示したように物質の乱雑さを表す物理量と捉えてください。ある温度においてエントロピー変化が起こった時のエネルギー変化がTΔSとなります。

図4 エントロピー変化のイメージ
図4 エントロピー変化のイメージ[クリックで拡大]

 ある化学反応において式(8)によって得られるΔGが負になる場合、その反応は自発的に進行し、ΔG分のエネルギーを電気エネルギーに変換して利用できます。逆に言うと、ΔGが正になる場合は自発的には反応は進まず、外部からΔG分のエネルギーを投入することが必要となります。

 式(7)の反応における式(8)の各項のデータを表1に示します。

表1 水素と酸素の反応における熱力学データと燃料電池の理論発電効率(25℃、1気圧)
表1 水素と酸素の反応における熱力学データと燃料電池の理論発電効率(25℃、1気圧)[クリックで拡大]

 燃料電池における理論発電効率は、式(7)にあるエントロピー変化に対して理論的に電気エネルギーに変換できるΔGの割合として計算されます。

(9)理論発電効率(%)=(ΔG/ΔH)×100

 表中には生成する水が気体と液体の場合の数値が記載されています。気体の水が液体に変化する際に凝縮熱(44 kJ/mol)が放出されるため、ΔHがその分だけ異なっています。

 他の熱力学データは表中の通りで、それぞれで理論発電効率を計算すると、液体の水が生成する場合は83.0%、気体の水が生成する場合は94.5%となります。それぞれ高位発熱量基準(HHV基準)、低位発熱量基準(LHV基準)での数値となります。

 燃料電池の種類によっては運転温度が違い、生成する水の状態も異なります。どちらの基準で計算された発電効率なのかが記載されていない資料などを目にすることがありますので、注意したいところです。



6.おわりに

 連載第1回では、燃料電池のごく基本的な原理について解説しました。次回以降では、燃料電池に使われる各種材料について、燃料電池の性能を大きく左右する電極触媒を中心に、基本事項から開発動向までを解説していきます。

⇒ 連載バックナンバーはこちら

筆者代表紹介

敬愛(けいあい)技術士事務所 所長・技術士(化学部門) 森田敬愛(もりたたかなり)

1991年4月〜1993年6月、ほくさん(現エア・ウォーター)。1993年7月〜2005年3月、ジョンソン・マッセイ・ジャパンにて燃料電池用電極触媒の研究開発に従事。2005年6月〜2014年3月、田中貴金属工業にて燃料電池用電極触媒や電解用電極の開発などに従事。2014年4月に個人事務所「敬愛(けいあい)技術士事務所」を設立し、現在まで水素・燃料電池分野の技術コンサルティングに従事。


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