米国依存が強まる日本の直接投資、日米独比較で見える構造的リスク:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(45)(2/2 ページ)
ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は「日米独の相手国別直接投資残高」について見ていきます。
ドイツの相手国別直接投資残高
続いて、ドイツの直接投資残高も見てみましょう。図3が、ドイツの相手国別の直接投資残高をまとめたものです。
ドイツの場合は、特にオランダ、ルクセンブルク、米国との関係性が強いようです。いずれも対外直接投資の方が超過していて、ドイツからの投資が多いことが分かりますね。
特に米国はドイツにとって最も対外直接投資残高の大きな国となっています。とはいえ、これらの国からの対内直接投資も相応の水準であることが読み取れます。このように、多くの国では、相手国ごとに双方向的なグローバル化が進んでいるといえそうです。
また、ドイツの場合は、地理的に近い英国、フランス、スイスなども比較的規模が大きく、対外直接投資においては中国の存在感も大きいようです。
日本については、対内直接投資がそれなりに大きな規模となっています。スイスなどと共に、数少ないドイツへの直接投資が超過する国となっています。一方で、ドイツから日本への投資は非常に少ないことが分かります。
日本は対外直接投資に対して、対内直接投資が極端に少ない国です。米国やドイツなど個別の関係においても、対外直接投資の方が超過していて、対内直接投資が少ない傾向が確認できます。
日本の相手国別直接投資残高
最後に日本の状況を確認しておきましょう。図4が日本の相手国別の直接投資残高をまとめたものとなります。
日本の場合は、対外直接投資も対内直接投資も、対米国が圧倒的な水準となっています。しかも対外直接投資に大きく偏っていることが見て取れます。対外直接投資に対して、対内直接投資が10分の1にも満たないのです(各軸の数値にご注目ください)。
対米以外でも、対外直接投資が大きく超過していて、特に規模の大きなシンガポール、英国、オランダでもその傾向が確認できます。対フランスでは対外直接投資残高が151億ドルに対して、対内直接投資残高が220億ドルと、比較的規模の大きな国で唯一対内直接投資が超過しています。対中国ではやはり対外直接投資が超過していて、投資額も米国、オランダ、英国に次いで4番目の規模です。
相手国別に見た直接投資の特徴
今回は相手国別に見た直接投資残高の規模についてご紹介しました。
全体で見れば自国への投資が超過している米国や、他国への投資が超過しているドイツでも、相手国別に見るとその傾向も異なることが分かります。基本的には、国ごとに双方向的な投資関係にあることが基本となるようです。
貿易では存在感の大きな中国も、各国の直接投資での関係で見れば、今のところそこまで大きな存在ではないことも印象的です。
日本は対外直接投資が大きく超過していて、他国に投資ばかりしていて他国からの投資が極端に少ない状況です。相手国別に見れば対米関係が非常に強く、他国との差が大きいのが特徴的ですね。米国以外の国についても、対外直接投資の方が大きく超過しているのも確認できました。
日本は昨今の円安もあり、技術水準の割に安い国になっています。世界情勢が大きく揺れ動き、経済安全保障の重要性が叫ばれる中、日本のこのような歪(いびつ)な対外関係がこの後どのように変化していくのか、今後注視していきたい観点です。
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筆者紹介
小川真由(おがわ まさよし)
株式会社小川製作所 取締役
慶應義塾大学 理工学部卒業(義塾賞受賞)、同大学院 理工学研究科 修士課程(専門はシステム工学、航空宇宙工学)修了後、富士重工業株式会社(現 株式会社SUBARU)航空宇宙カンパニーにて新規航空機の開発業務に従事。精密機械加工メーカーにて修業後、現職。
医療器具や食品加工機械分野での溶接・バフ研磨などの職人技術による部品製作、5軸加工などを駆使した航空機や半導体製造装置など先端分野の精密部品の供給、3D CADを活用した開発支援事業などを展開。日本の経済統計についてブログやTwitterでの情報発信も行っている。
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