対外2兆ドル、対内0.2兆ドル――日本の直接投資構造から見る特異性:小川製作所のスキマ時間にながめる経済データ(44)(1/3 ページ)
ビジネスを進める上で、日本経済の立ち位置を知ることはとても大切です。本連載では「スキマ時間に読める経済データ」をテーマに、役立つ情報を皆さんと共有していきます。今回は「直接投資」について解説します。
前回は、日本の経済活動の中で、海外との関係を総合的に把握できる「経常収支」と、貿易や直接投資との関係性を解説しました。
さて、今回は海外との関係で非常に重要な「直接投資」について、あらためてその定義や意義を、統計データで掘り下げます。
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海外直接投資とは何か?
直接投資は、海外での生産活動を行う対外活動に対する投資です。基本的には、海外現地法人(現地子会社)を設立し、現地での生産活動の結果を配当金などの形で自国本社に還流させる活動として理解できます。
この直接投資による収益が直接投資収益として、経済統計でも集計されています。
前回ご紹介した通り、日本の場合は、日本企業の海外での対外活動が多く、外国企業の日本での対内活動が極端に少ないため、正味の直接投資収益がプラスで推移しています。
また、直接投資は現地法人への出資分の残高としてその規模が測られますが、日本は対外直接投資残高が対内直接投資残高を大きく上回っています。この直接投資の不均衡による超過分が、日本が海外に持つ純資産の大部分を占めています。「日本は世界最大の純資産国」といわれる要因の大きな部分が、直接投資の超過分だといえます。
つまり、日本は海外への投資が活発な反面、海外からほとんど投資されないため、企業の営業外収益が嵩上げされ、海外純資産が積み上がっている状態ということです。今回は、この直接投資について、各国との比較を通じて、日本の規模やバランス、効率について可視化していきたいと思います。
まず、直接投資についてあらためてその定義と意味を確認していきましょう。
直接投資とは、海外で事業を行うために、相手企業のM&A(合併と買収)や、現地に子会社や工場をゼロから設立するなどの方法で、経営に支配力を持つことを目的とした投資です。
図1は、自国企業が海外への対外直接投資を行う場合の模式図です。対内直接投資は、その逆となります。
対外直接投資とは、海外での現地法人の株式などの持分(資本)を増やすことを意味します。現地法人は、この直接投資を元手に、設備投資を行ったり、研究開発したりと対外活動を拡大させます。
対外直接投資を行うことで、国内本社が海外に保有する金融資産(対外直接投資残高)として蓄積することになります。現地法人からすれば、国内本社に対する負債という扱いです。
海外現地法人などが海外で行う事業活動(対外活動)は、主に現地の人が雇用者として雇われ労働力を提供し、その対価として人件費(雇用者報酬)が支払われます。生産に伴う税金も現地国政府に納税されます。つまり、生産活動に伴う付加価値(GDP)や給与、税収は現地国で発生することになります。
生産活動の結果の利益の一部が、配当金などの形で直接投資収益として国内本社に分配されます。これが、国内本社からすれば営業外収益であり、経済統計上は海外からの第一次所得(財産所得)として計上されるわけです。
現地生産に必要な部品などを日本から供給すれば、それは財貨の輸出となりますし、現地生産に対してライセンス料を受け取るようなことがあれば、それはサービスの輸出となります。直接投資の拡大に伴って輸出入の拡大に寄与する面もあります。
ただし、日本の場合は、部品供給についても輸出より現地生産が進んできたことや、財貨/サービスの輸出が全体としては緩やかな拡大傾向でしかない点、さらに他国と比べて輸出が少ないことを踏まえると、貿易と直接投資をある程度切り離して捉えた方が良いように思います。
一方で、対内直接投資とは、外国企業の自国への対内活動への投資です。対内活動により、国内で生産活動が行われ付加価値が生まれ、国内労働者が雇用され、利益の一部が直接投資収益(支払)として海外本社に分配されます。
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