なぜ三菱電機がラダー生成AIに挑んだのか、“精度”の先に描く姿とは:FAインタビュー(2/2 ページ)
製造業における深刻な人手不足と熟練技術者の減少により、PLCを制御する「ラダープログラム」の技能継承が大きな課題となっている。これに対し、三菱電機が生成AIの活用に取り組んでおり、「IIFES 2025」ではラダー生成AIIのデモを披露し、反響を呼んだ。汎用LLMでは困難とされたラダー生成に、同社はなぜ挑み、いかに壁を乗り越えたのか、話を聞いた。
ラダーやSTの解説生成に着手、AIの“精度”が全てではない
MONOist ラダープログラムの生成などに当たって、どのようにAIを機能させているのでしょうか。
竹内氏 いろいろなAIを組み合わせている。現状、ラダー言語の方はGPT、ST言語の方はClaudeのモデルを使っている。ただ、これらはあくまで手段なので、時々に応じて最適なものを使いたい。三菱電機の情報技術総合研究所とも協力しながら、複数のやり方で取り組んでいる。そこは汎用のLLMであったり、自分たちで作ったモデルをエッジに組み込んだり、提供するサービスの形によって変わってくるだろう。
AIは学習データがどうしても必要になる。三菱電機の工場やコンポーネント製造技術センター、生産技術センターにも協力してもらい、データを集めている。使えるデータが豊富にあることは、モノづくり企業である三菱電機にとって強みになっている。ラダープログラムをコンパイルする技術も自社で保有しており、ラダープログラムが持つ情報や成立する条件など、ノウハウを豊富に持っている。
ただ、世の中には膨大なインストールベースのラダープログラムが存在する。その中には、各社のノウハウや暗黙知が詰まっている。それらをどのように抽出するかも研究の対象になっている。
江口氏 どんな入力形態がよいのかは、お客さまによって異なる。それは出力形態も同じで、立場によってニーズが違ってくる。メカ側ならタイムチャート、制御側ならフローチャート、エンドユーザー/保全側はまた異なるかもしれない。
MONOist 生成AIはハルシネーションも懸念されますが、ラダー生成AIの精度はどうなのでしょうか。
竹内氏 テストでは正解率60〜70点だった。正解率と言っても、装置を動かすに当たってプログラムの正解は1つではない。生成AIは評価基準も一緒に検討しないといけないと考えている。
江口氏 実は、テストはかなり厳しめに行っており、不正解となったものでも、あとほんの少し、“この一行さえ直せば満点だった”というケースが多かった。そこは手応えを得た。
竹内氏 ハルシネーションに関しては、いろいろな防ぎ方があると思う。生成時にチェックしたり、出力後のテストでチェックしたり、そこはサービスとセットで考えている。IIFESのデモでは、文字の仕様書を基にラダープログラムを生成させたが、今後は機械や電気の設計書も使ってプログラムを生成できるようにしたい。より上位の情報を与えるほど精度が上がり、ハルシネーションも起きにくくなる。
ユーザーの本来の目的は、ラダープログラムを生成することではなく、意図した通りに装置を動かすことだ。必ずしも生成AIの精度がサービスの普及に直結するパラメーターだとは思っていない。生成AIが出した回答をそのまま装置に書き込むわけではない。
ITの世界で行われているAIによるプログラム生成でも、毎回100%正しい答えが出ているわけではない。AIが生成し、それをまた修正するという作業を繰り返している。GX Works3でも同じような体験が可能ではないかと考えている。
MONOist 今後のロードマップを教えてください。
江口氏 IIFESまではオープンイノベーション推進部で開発を主導していたが、来場者の評価が大変良かったため、本格的に事業化を目指してそれまでの開発人員がソフトウエアシステム部に移り、開発を加速させている。
竹内氏 IIFESでは、生成AIによるプログラム解説のニーズも高かった。AIが生成したプログラムの信頼性をどのように担保するかは課題の一つだ。その点で、ユーザーには解説生成の方が受け入れやすい。そこでIIFES後に、ラダープログラムとSTプログラムの解説生成機能の開発にも取り組んでいる。
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