なぜ三菱電機がラダー生成AIに挑んだのか、“精度”の先に描く姿とは:FAインタビュー(1/2 ページ)
製造業における深刻な人手不足と熟練技術者の減少により、PLCを制御する「ラダープログラム」の技能継承が大きな課題となっている。これに対し、三菱電機が生成AIの活用に取り組んでおり、「IIFES 2025」ではラダー生成AIIのデモを披露し、反響を呼んだ。汎用LLMでは困難とされたラダー生成に、同社はなぜ挑み、いかに壁を乗り越えたのか、話を聞いた。
ITの世界で生成AI(人工知能)を使ったプログラム作成が広まっている。製造業でも、FAメーカー各社が、PLC(プログラマブルロジックコントローラー)のプログラム作成を生成AIがサポートする機能を相次いで発表している。
日本で長年使われてきたラダープログラムは特に、人手不足の加速と熟練技術者の減少とともに技能継承が課題となっている。三菱電機では生成AIを活用したラダープログラムの自動生成に取り組んでおり、「IIFES 2025」では開発段階のデモンストレーションを披露した。
三菱電機がラダー生成AIの開発に挑む意義や背景などを、名古屋製作所 ソフトウエアシステム部 エンジニアリングソフトウエア第一Gの竹内桂志氏と同部 エンジニアリングソフトウエア戦略Gの江口明宏氏に聞いた。
I新規作成と改造のデモ、休む間もなく来場者に説明
MONOist AIによるラダープログラム自動生成の開発背景を教えてください。
竹内氏 制御設計における人材不足が深刻化している。そもそも人材確保に悩まれている中で、プログラミングができる人材はなかなか入って来ないと聞く。さらにラダープログラムとなると、大学などで学ぶ機会もほとんどない。そういった中で、品質の高い設備を作ろうとすると熟練技術者への依存度が大きくなり、属人性がかなり高くなっている。そういった課題を、生成AIの力を使って解決していきたい、というのが出発点だ。
もちろん設計/開発だけでなく製造、保守/運用の場面でも生成AIは活用できると考えているが、最初のターゲットとして設計に焦点を当てた。ユースケースとしては、新規のプログラム作成や、過去/既存プログラムから作成など主に4つを想定している。
竹内氏 IIFES 2025では、生成AIによるラダープログラムの新規作成と、既存のラダープログラムの改造のデモをお見せした。
新規作成では、入出力のデバイスと動作の仕様をまとめた仕様書を与えることで、AIがリスト形式のラダープログラムやフローチャート、説明文を出力する。このラダープログラムは、三菱電機のエンジニアリングソフトウェアである「MELSOFT GX Works3」にインポートできる形で出力される。
既存プログラムの改造は、既存のラダープログラムとコメント、さらに「こういう風に改造したい」という指示を生成AIに与えると、改造したラダープログラムと改造内容の説明文およびフローチャートを生成するというものだ。
ただこれらはまだデモの段階であり、製品化を進める中で、より良いサービスの形を模索していきたい。
汎用LLMに当初は“苦戦”を予想、プロンプトに“工夫”
江口氏 2024年に三菱電機のオープンイノベーション推進部で、生成AI関連開発構想に関してヒアリングを行った結果、社内の各部署から「生成AIを使ってラダープログラムを作りたい」という要望が多く寄せられた。実際にデータベースにあるラダープログラムを抽出したり、解説文を生成させたりするのにAIを活用しているメンバーもいた。また、海外メーカーが生成AIによるプログラム作成に取り組んでおり、われわれのユーザーからも「三菱電機はやらないのか」という声を聞いていた。“開発する価値がある”と判断して、オープンイノベーション推進部で開発を始めることになった。
当初は“苦戦”を予想していた。そもそも汎用のLLM(大規模言語モデル)がラダープログラムを理解したり、生成したりする機能を有しておらず、学習データになるようなラダープログラムがほとんど出回っていない。
われわれもプロンプトを工夫することで、ようやくラダープログラムを生成できるようになった。GX Works3の中のロジックも内部的に使って成立させている。その辺は外部のメーカではできない部分ではないかと考えている。それらの工夫を除外すると、今のLLMでは全くと言っていいほどラダープログラムを生成できない。
MONOist IIFESではどのような反響を得られましたか。
江口氏 IIFESでは多くの説明員を用意していたが、彼らが全く休憩する暇もないくらい、多数の来場者がラダー生成AIのコーナーを訪れた。来場者からは「本当に生成AIでラダープログラムが作れるんだ」という驚きの声が多く、「すぐに使えるのではないか」「発売はいつか」といった反応も得られた。
竹内氏 本当に待望されていたのだと感じた。もちろん、「これではまだ実際の装置に入れられない」という声もあった。われわれの認識としても同じであり、現在はユーザーとのPoCに向けて開発を急いでいる。さまざまなフィードバックを得ながら、より良いサービスにしたい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


