富士通が自律型AIエージェントで小売業界へ、2030年度売上2000億円市場を狙う:スマートリテール(2/2 ページ)
富士通は、自律型AIエージェントを核に小売現場の課題を解決する新ソリューション「Uvance for Retail」を発表した。「リテールテックJAPAN 2026」で披露した同製品のデモンストレーションの様子も紹介する。
富士通の独自技術である因果推定を活用し、顧客のロイヤリティー向上を目指すマーケティング施策のデモンストンレーションも参考出展した。
この機能は、一般的なスタンダード層の顧客を、より優良なプレミア層へとランクアップさせるためのアプローチを導き出すものだ。顧客の購買行動などのデータをWatomoが分析し、例えば美容製品であれば「マットな質感を好む」「デザイン性を重視する」といった複数の要因を数値化し、スコアとして可視化する。デモンストレーションでは、ターゲットとなる顧客を設定すると、その顧客が最も購入に至りやすい具体的な商品や、どのような提案を行うべきかを、レコメンドする一連の流れを披露した。
これにより、従来は個別の提案が難しかった潜在的なプレミア層に対して、スタッフの経験や勘に頼ることなく、データに基づいた効果的なパーソナライズ接客が可能になるという。
分断、遮断、独断……小売業が直面する3つの「断」
自律型AIソリューションが求められている背景には、日本の小売業界が直面する構造的な課題があると、富士通 執行役員常務の古濱淑子氏は指摘する。「現場の意思決定を阻害する『分断』『遮断』『独断』という3つの『断』が存在する」(古濱氏)。
販売や在庫など業務ごとにシステムが独立し、社内にデータが散在する「分断」、メーカーや卸売業者間で企業間の情報共有が阻まれる「遮断」。そして、これら分断/遮断されたデータを現場が処理しきれず、最終的に個人の勘や経験に頼らざるを得なくなる「独断」である。
古濱氏は、「このような負担が、かつて日本の小売業を支えてきた現場の機動力を失わせ、従業員の疲弊と競争力の低下を招いている。3つの『断』をデータとAIの力で取り払い、本来持つべき力を取り戻すためのアプローチとしたい」(古濱氏)と開発の背景を語った。
パートナーとなったブレインパッド 代表取締役社長 CEOの関口朋宏氏は、「データというものは単なる記号であり、それだけでは意味を持たない。分析することで情報になり、やがて知恵へと変わっていく。データ領域に特化して20年間歩んできた当社と、Uvanceのチームがシームレスにタッグを組み、データの価値をビジネスとして経済に届けていきたい」と意気込む。
また、GK Software CEO兼取締役会長のマイケル・シャイブナー氏も、「私たちの新たな成長のフォーカスは日本であり、富士通と共に日本市場へ参入できたことを非常にうれしく思う。既に共同開発しているソリューションに加え、エージェントAIなどの技術を用いてソフトウェアの開発スピードを上げ、より良い製品の提供を目指す」と展望を述べた。
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