品質はどのように作られ、どのように確認されているのか:製品リコールを生む品質不良の原因と対策(1)(2/2 ページ)
重大製品事故は増加傾向にあり、その原因の多くは「製品起因」に分類される。しかし、設計や量産の現場では、品質を作り込み、確認する仕組みが整備されている。それにもかかわらず、なぜ重大事故やリコールは発生するのか。本連載では、設計品質と量産品質の構造を整理し、品質不良が生まれるメカニズムを体系的に考察する。
品質の考え方と仕組み 〜「品質を確認」する作業〜
製品が量産開始されるまでの設計プロセスと、製品の量産開始後の量産プロセスを、それぞれ図5、図6に示す。設計プロセスでは青字の設計の後に、赤字の設計品質を確認する作業があり、量産プロセスでは青字の量産の後に、赤字の量産品質を確認する作業が行われる。
設計プロセスで試作を2回行えば、設計品質の確認も2回行うことになる。なお、図5の量産試作とは、量産する製品と全く同じ部品で作製する試作セットのことであり、販売する製品にはならない。設計後には試作セットを作製し、設計者や品質担当者がそれを用いて試験を行い、設計品質を確認する。また、試作セットを作製する前、厳密には試作部品を発注する前に審査を実施する。これはCADデータなどの設計データのみで設計品質を確認する作業だ。設計データを確認するだけで判断できる内容も多いためである。
- 設計品質の確認作業(カッコ内は主な担当者)
- 設計データで確認する審査(設計者、品質担当者)
- 試作セットで確認する試験(設計者、品質担当者)
量産プロセスでは、組み立て作業を行う量産ラインの各工程で、それぞれの工程が適切に行われたかを随時確認する工程内(インライン)検査を実施する。工程内検査は一般的に目視で行われる。その後、製品完成後に出荷検査を実施する。
工程内検査は全数検査であるが、出荷検査は抜き取り検査とする場合が多く、毎月100台を生産する場合は、その中から数台を抽出して検査する。出荷検査では目視検査に加え、量産された製品を実際に試験することもある。毎月の量産開始前には、製品を構成する購入部品の受入検査を実施する。また量産期間中には、年1〜2回の監査を行う。
監査の内容は、組立メーカーの作業者教育や文書管理などの品質管理システム全般の確認から、製造ラインの作業確認までに及ぶ。監査は個々の製品の量産品質を確認するものではなく、量産品質を担保する品質管理システムを確認するものだ。この監査は組立メーカーが自社で行う場合もあれば、組み立てを依頼する製品メーカーが行う場合もある。
- 量産品質の確認作業(カッコ内は主な担当者)
- 購入部品の確認を行う受入検査(部品受入担当の品質担当者)
- 製品の確認を行う工程内検査(組み立て作業者)
- 製品の確認を行う出荷検査(品質担当者)
- 品質管理システムを確認する監査(品質担当者)
このように、青字の製品を作製する作業の後には、必ずその品質を確認する赤字の作業がある。つまり、設計品質と量産品質は製品メーカーと組立メーカーにより管理されている。 (次回へ続く)
筆者プロフィール
オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)
上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。
◆ロジカル・エンジニアリング Webサイト ⇒ https://roji.global/
◆著書
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