“再生医療のラストワンマイル”に挑む、細胞加工製造ユニット「KIOSK」が完成:イノベーションのレシピ(2/2 ページ)
Gaudi Clinicalは、医療機関近接型の小型細胞製造ユニット「KIOSK」を始動した。安確法適合の拠点を分散配置し、輸送コスト削減と品質維持を両立。「再生医療のラストワンマイル」をつなぐ次世代インフラ構築を目指す。
ユニット内で培養、洗浄、凍結、保管工程を完結
新日本橋KIOSKは、出資者であり戦略的パートナーのキスコの自社ビル内に開設した。一般的なオフィスフロアの床に耐薬品性シートを敷設し、PRP製造用(5×5m)とASC製造用(3×5m)の2基のユニットが稼働する。
ユニット内部は、安確法のクリーンルーム管理基準に準拠したゾーニングとなっている。更衣などを行う前室(グレードC)を経て、調製室(グレードB)、細胞操作を行う安全キャビネット内(グレードA)へと清浄度が管理される。設備としては、安全キャビネットや遠心機、セルカウンター、CO2インキュベーターなどを備える。組織の受け入れから、細胞の分離/培養、増殖後の回収/洗浄、新しい容器への充填(じゅうてん)/凍結、保管、搬送準備までの工程をユニット内で完結させる。収容人数は安全キャビネットの数に対し1人ずつ入室可能だ。
Gaudi Clinical 執行役員 製造・流通オペレーション本部長の林昌弘氏は「KIOSK自体が巨大な空気清浄機のような役割であるため、ビルの一般空調との連動は不要。各ユニットは内部の清浄度を単独で維持している」と語る。
物流面では、−120℃の環境で保管する特殊な保冷材を活用し、組織/細胞の活性を落とさないコールドチェーン(低温物流)を構築した。医療物流の分野では、元ヤマト運輸でコロナウイルスワクチンの超低温輸送プロジェクトを主導した林氏が統括。製造管理分野では、自家培養軟骨など再生医療を率いてきた森由紀夫氏(Gaudi Clinical 最高技術顧問)が参画している。
初期投資は従来の3分の1、将来は数百拠点へ
KIOSKの導入メリットについて飛田氏は、品質管理に加えてコストメリットと施工性の高さを強調する。「部屋全体をクリーンルーム化する従来の『要塞(ようさい)型』に比べ、KIOSKは初期投資を約3分の1程度に抑えられると試算している」(飛田氏)。また、既存の部屋に後付けできるため、大規模な建築工事は不要であり、早ければ数日で工事が完了するという。
Gaudi Clinicalは今後、1〜2年をかけて新日本橋KIOSKで稼働実績の蓄積と運用モデルの確立を行う。その後、KIOSKの外販に加え、CPCの設計/構築、運用支援までを含むソリューションとして医療機関や研究機関、再生医療関連企業への提供を目指す。具体的な展開として飛田氏は「名古屋、大阪、福岡など需要の高い地域への展開を狙う」とし、将来的には数百基規模での全国展開を見据える。また、人の手によるバラツキをなくすため、培養工程へのロボティクス導入など、自動化技術の実装も検討する方針だ。
プロジェクト名の「KIOSK」は、トルコ語の「Koşk(キョシュク=あずまや)」に由来する。飛田氏は「この新日本橋KIOSKを起点に、安全で高品質な細胞が必要な時にすぐに届く、再生医療の『ラストワンマイル』という新たな社会インフラを構築する」と語った。
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![ユニットの前室側[クリックで拡大]](https://image.itmedia.co.jp/mn/articles/2602/02/teando20260128gaudi3.jpg)
![調製室側から見たユニット内部[クリックで拡大]](https://image.itmedia.co.jp/mn/articles/2602/02/teando20260128gaudi4.jpg)




