ロボットとAIで細胞医療の「死の谷」を克服、アステラスと安川出資の新会社が始動:ロボット開発ニュース(1/3 ページ)
アステラス製薬と安川電機が共同出資するセラファ・バイオサイエンスが、ロボットとAIを活用して細胞医療製品の研究開発からGMP製造までを可能にする次世代細胞製造プラットフォームの事業展開について説明した。
アステラス製薬と安川電機が共同出資するセラファ・バイオサイエンスは2025年10月21日、東京都内で会見を開き、ロボットとAI(人工知能)を活用して細胞医療製品の研究開発からGMP(適正製造規範)製造までを可能にする次世代細胞製造プラットフォームの事業展開について説明した。本社の東京に加えて2026年度には大阪に研究開発拠点を置き、2027年度からは茨城県つくば市内の拠点で細胞医療製品のGMP製造を始める体制を整える方針である。
セラファ・バイオサイエンスが事業の対象とする細胞医療は、iPS細胞に代表される多機能幹細胞など再生能力を持つヒトの細胞を身体の外で育てて移植する治療法である。細胞が障害を受けたり数が減ったりして機能が低下する病気の治療が可能で、細胞を移植して治療するという観点では臓器移植に近い。
ただし細胞医療は、医薬品のモダリティ(医薬品の作り方による分類)として直径約20μmと極めて大きい細胞を用いている点に難しさがある。最も一般的なモダリティである低分子化合物は直径1nm以下であり、市場が拡大しているバイオ医薬品に用いられる抗体が直径数nm、遺伝子治療に用いられるウイルスが直径22nmよりもはるかに大きい。細胞医療において、細胞自身が抗体や遺伝子を作り出す工場のような役割を果たしている点でも従来のモダリティと大きな違いがある。
セラファ・バイオサイエンス 代表取締役社長の山口秀人氏は「何より細胞医療の最大の課題は製造にある。低分子医薬品は、その低分子の製法によって薬効に関わる特性が大きく変わることはないが、細胞医療では製法の変更が最終製品の特性に大きく影響を与える。作り方そのものが製品であり、作り方が変わると違う製品になってしまう」と語る。例えば、研究開発の段階で薬効を確認した細胞医療製品が、製造移管するとオンコジンミューテーションと呼ばれる細胞のがん化を起こしてしまうことがある。このようなことが起こると、全ての取り組みを振り出しに戻して一から研究開発を始めなければならない。
セラファ・バイオサイエンスは、この細胞医療製品の製造工程の再現性/安定性の課題や、手作業依存によるばらつきとコストの高さという、再生医療の実用化に向けた「死の谷」を克服することを目的に設立された。
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