三菱ふそうが取り組むEVのeCanterとディーゼルCanterの混流生産 その秘訣は何か:モノづくり最前線レポート(2/2 ページ)
三菱ふそう・トラックバスは同社のEVトラック「eCanter」の生産設備/体制の説明と川崎製作所の工場内を報道陣に公開した。本稿ではeCanterの生産ラインに焦点を当てて、川崎製作所のモノづくりを紹介していく。
車体ごとに与えられた個別番号に準拠して、生産ラインを適正に管理
組み立てラインの初めの工程では、サプライヤーから納入されたフレームをラインに運び入れ、専用のマシンで車体番号などの打刻(ナンバリング)を行う。打刻済みのフレームは組み立てラインを進んでいき、配線(ハーネス)や配管などが組み付けられていく。
複数の車種の組み立てを同一のラインで実施するために、車種ごとに個別の番号を決めて、それに準じた適正な生産管理を実施している。例えば、別の生産ラインで組み立てたエンジンを組み立てラインに搬入するときは、フレームがエンジン組み付けの工程に近づくと上部からコンベヤーにエンジンを搬送し、先に工程の所定の位置に設置する。その後、後から来たフレームを上からドッキングさせている。
このように、工程の初めで打刻した番号に合わせて、組み立てに必要な全ての部品を正確な場所/工程に届くようにシステムを構築している。「eCanterに使用するバッテリーは、モジュールだけでなく、周囲の黒い保護カバーや高圧ケーブルなども含めて、別工程で事前に1つのユニットとして組み上げた状態でラインに供給する。バッテリーユニットは、アクスルと同様にコンベヤーで先に所定位置まで送り、その後に上からフレームを降ろしてドッキングしている」(西澤氏)。
組み立てラインの後半工程では、別工程で内装の組み付けが完了したキャブを上から搬送し、複数人で位置を確認しながら車体に組み合わせる。「キャブはバリエーションや組み付けのポジションがそれぞれ異なるため、人手で作業した方が早い」(西澤氏)。
キャブの搭載が終了すると、ホイールが組まれた状態のタイヤを作業者が取り付け、その後、設定した規定のトルクで正確にナットを締め込むことができる「ナットランナー」という機械を使用して、自動的にナットを締め付ける。これらの組み付け作業と並行する形で、別の作業者が各車両の仕様に合わせたECU(電子制御ユニット)パラメータを書き込む。これらの工程を完了した後に、車両が組み立てラインから離れ、無事“ラインオフ”となる。ここから各車両を自走させ、次の検査ラインへと向かう。
市場に出回る全ての車両に対して、精密な検査を実施
市場に出荷される全ての車両は、安全性、法規適合性、そして性能が基準を満たしていることを保証するために、専用の検査ラインで多岐にわたる厳密なチェックを受ける。この品質保証プロセスは、顧客への信頼を担保する上で不可欠な最終関門である。
車両に搭載しているカメラについては、専用の治具を使用してカメラの向きが仕様で定める角度からずれていないかなどを確認し、ずれがある場合は補正を入れる。作業者がハンマーを使い、主要締結部に緩みがないかを確認した後に、ローラー上で実際に車両を走行させてスピードメーターの表示精度やABSの作動性能などを試験し、ヘッドランプの光軸調整、ミリ波レーダーのキャリブレーションといった形で検査が進んでいく。
また、eCanterに特化した検査として、普通充電と急速充電のポートが正常に機能するかのチェックも検査工程で実施する。静音性が高いEVであるeCanterは、低速走行時に意図的に音を出すことで存在を知らせるAVAS(車両接近通報装置)を搭載しており、これが正常に作動しているかも確認する必要がある。「工場内は騒音が大きく作業者には聞こえないため、超音波センサーを用いて音の発生を検知している」(西澤氏)。
他にも、組み立てラインで書き込んだECU(電子制御ユニット)のパラメータがその車両の仕様に対して正しいものであるかについても、検査ラインで最終的な検証を実施する。これらの厳しい検査項目の全てに合格した車両は、製品出荷のためのモータープールに移動される。1つでも検査項目で合格しなかった車両は修正エリアへと送られ、適切な処置を施してから再び検査ラインにかけられることになる。
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