三菱ふそうが取り組むEVのeCanterとディーゼルCanterの混流生産 その秘訣は何か:モノづくり最前線レポート(1/2 ページ)
三菱ふそう・トラックバスは同社のEVトラック「eCanter」の生産設備/体制の説明と川崎製作所の工場内を報道陣に公開した。本稿ではeCanterの生産ラインに焦点を当てて、川崎製作所のモノづくりを紹介していく。
三菱ふそう・トラックバス(以下、三菱ふそう)は2025年11月25日、本社/川崎製作所(川崎市中原区)で記者会見を開き、同社のEV(電気自動車)トラック「eCanter」の生産設備/体制の説明と川崎製作所の工場内を報道陣に公開した。本稿ではeCanterの生産ラインに焦点を当てて、川崎製作所のモノづくりを紹介していく。
川崎製作所の歴史と“フィッシュボーン”の生産体制
川崎製作所では、トラックの車両やエンジン/アクスル、パワーバック、キャブ(運転席)の組み立てラインが一直線になっている。敷地面積は33万m2で従業人は約3500人。完成した車両の最終出荷検査も川崎製作所内で実施している。
川崎製作所の組み立てラインは“フィッシュボーン形式”を採用している。これは魚の骨のようなイメージで、工場内の一直線の組み立てラインを魚の背骨に見立て、そこを中心にさまざまな部品が入ってくるというコンセプトで生産に取り組んでいる。
三菱ふそう 生産本部 生産・計画統括部 組み立て工作部 部長の西澤祐介氏は「工場は1941年に立ち上がり、約84年の歴史がある。フィッシュボーンの組み立てラインを実現させるための取り組みは約10年前から始め、現在は一直線の長い組み立てラインができている」と語る。
川崎製作所のトラック生産ラインは2本ある。1本は、大型トラックの「Super Great」と中型トラックの「Fighter」を、もう1本はeCanterとディーゼルエンジンを搭載する小型トラックの「Canter」を生産している。両生産ラインとも、異なる商品を同一のラインで生産する混流生産となっている。西澤氏は「eCanterはエンジンやプロペラシャフト、ATS(アフタートリートメントシステム)などがなく、ディーゼル車と比べて全くコンポーネントが違う。それでも、同じラインを使用して生産に取り組んでいることが川崎製作所の大きな特徴である」と強調する。
eCanterとCanterの基本的な組立工程は変わらないが、eCanterはEVトラックであるためエンジンを搭載する必要がない。そのため、Canterにディーゼルエンジンを取り付ける工程にeCanterが流れて来た場合にはバッテリーの組み付けを行うなどの対応を行っている。
同一のラインで複数車種の生産に取り組む理由について、西澤氏は「車種による生産数が変動しており、車種ごとに生産するラインを固定すると生産数が少ない時期には全くラインが稼働しないという無駄が発生してしまう。生産数の変化に柔軟に対応し、効率的に生産していくために1つのラインでやっている」と述べる。
多様な車種の生産に必要な部品だけを届けてくれるAGVシステムを構築
川崎製作所の現場では、同社内で「キッティングカート」と呼ぶAGV(無人搬送車)が工場内を走行している。「このAGV1台に各工程で車両1台の組み立てに用いる部品を積載している。ライン作業中に多様な種類の部品の中から必要なモノを探すのが手間になってしまうため、1台ごとに必要な部品を準備したキッティングカートが部品を届けることで、作業者はそこから部品を取って作業に集中できる」(西澤氏)。
部品をキッティングカートに乗せる作業者はバーコードを読み込むことで、必要な部品が分かるようになっているため、作業中に迷わない仕組みができている。組み立てに必要な部品をキッティングカートに乗せる作業者、生産ラインで組み立て作業を行う作業者を明確に分けて、それぞれの分業体制を構築することで、業務の効率化を図っている。
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