「育児・介護休業法」改正後も35%の企業が「柔軟な働き方」に未対応:キャリアニュース
エフアンドエムが「柔軟な働き方」に関する実態調査の結果を発表した。「育児・介護休業法」の改正後も35%の企業が準備中と回答。制度整備と現場運用とのギャップが浮き彫りになっている。
エフアンドエムは2025年11月19日、「柔軟な働き方」に関する実態調査の結果を発表した。
同年10月施行の「育児・介護休業法」改正に伴って実施した同調査は、従業員数100人以上の企業に勤める従業員および人事担当者を対象とし、そのうち従業員408人、育児・介護休業法対応中の人事担当者206人から有効回答が得られた。
改正した育児・介護休業法では、企業には育児期の柔軟な働き方を可能にする措置が義務付けられている。しかし、義務化された同年10月時点でも、法改正に「対応完了している」と回答した企業は65%にとどまった。35%は「現在準備中である」と回答している。
対応について、企業規模による大きな差は見られず、中小企業、大企業ともに「対応完了している」の回答割合は7割以下(61〜69%)だった。法改正対応に関する自由記述では、「要員不足」「業務分担が難しい」「現場の理解不足」など運用段階での課題が多く挙がっている。
また、人事担当者に「自社では現実的ではない制度」を質問したところ、「時間単位や半日単位での休暇が取得できる制度」(17%)、「テレワークの仕組み」(16%)の回答割合が比較的高かった。回答理由としては「ロールモデルが存在しない」「意識改革が必要」「人材が足りない」などが挙がっている。
続いて、育児期の柔軟な働き方に向けて重視する制度を尋ねた。その結果、人事担当者の多くは「始業時刻等の変更」(84%)、「短時間勤務制度」(75%)を挙げた。
一般従業員も「始業時刻等の変更」(58%)、「短時間勤務制度」(44%)が上位を占めたが、「テレワーク(月に10日以上)」(41%)、「保育施設の設置運営等」(34%)、「就業しつつ子を養育することを容易にするための休暇の付与」(19%)などにも回答が分散している。家庭環境や働き方に応じたさまざまな制度を求める傾向がうかがえる。
「子育てと仕事の両立に必要なもの」を尋ねた質問では、人事担当者も一般従業員も、上位三項目は「時間単位や半日単位での休暇が取得できる制度」(人事75%、一般63%)、「柔軟な働き方に対する上司や同僚の理解」(人事62%、一般52%)、「子の看護などで突発的な休みを取れる職場の雰囲気」(人事53%、一般53%)だった。差が見られたのは「残業の免除」(人事50%、一般25%)と「保育園等の設置」(人事17%、一般25%)だった。
「柔軟な働き方」のために必要なものを男女別に見ると、男女ともに「時間単位や半日単位での休暇が取得できる制度」が最多となった(男性60%、女性72%)。
また、女性は「子の看護などで突発的な休みを取れる職場の雰囲気」(66%)や「短時間労働でも評価に影響がない成果型の評価制度」(60%)の回答割合が高かった。男性は「子の看護などで突発的な休みを取れる職場の雰囲気」(49%)に加えて、「柔軟な働き方に対する上司や同僚の理解」(52%)、「テレワークの仕組み」(42%)が比較的高かった。
給与が減っても「残業の免除」を希望する人は4割
「柔軟な働き方」をするためのさまざまな施策について、給与の減少をどの程度まで受け入れられるかについても尋ねた。多くの施策は「給与が減らない範囲でのみ受け入れたい」が7割以上を占めたが、「ある程度給与が減っても良い(5%〜それ以上)」の回答も一定数見られた。特に「残業の免除」は、39%が「ある程度給与が減っても良い」と回答している。
給与が減っても「柔軟な働き方」を希望する理由としては、「家族の時間が大事」「仕事よりもプライベート優先」「無理なく働きたい」「周囲に迷惑を掛けるので減給は当然」などが挙がった。減収を受け入れても柔軟に働きたい層の多様なニーズがうかがえる。
同社は、「柔軟な働き方」の仕組みづくりに取り組む企業が注目すべきは、多数派の平均ではなく、少数ながらも強いニーズを抱える層をどう支えるかであると分析している。
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