ハロイサイトを用いた充電容量10倍のナノシリコン負極材:第16回 高機能素材 Week
ファイマテックは、「第14回 高機能プラスチック展 PLASTIC JAPAN」で、天然のアルミノケイ酸塩粘土鉱物「ハロイサイト」から抽出したナノシリコンを用いたリチウムイオン電池用負極材の開発品を紹介した。
ファイマテックは「第16回 高機能素材 Week −Highly-Functional Material Week−」(会期:2025年11月12〜14日、幕張メッセ)内の「第14回 高機能プラスチック展 PLASTIC JAPAN」に出展し、天然のアルミノケイ酸塩粘土鉱物「ハロイサイト」から抽出したナノシリコンを用いたリチウムイオン電池用負極材の開発品を紹介した。
開発のカギは造粒工程
同開発品は、ハロイサイトから抽出したナノシリコンを造粒し、カーボンコートを施したものだ。シリコンは電気が流れにくい特性があるため、シリコン粒子の表面にカーボンをコーティングすることで、電気を通すルートを確保している。
同開発品の一次粒子径は10〜50nmで、造粒粒子径は1〜10μm、カーボンコートを含まないシリコン純度は85〜95%となる。
ファイマテックの説明員は「シリコン負極材は実現できれば、現在のリチウムイオン電池の負極材として主流であるグラファイト負極材と比べて、理論上は約10倍の充電容量を有する」と話す。
一方で、シリコン負極材は充放電時に大きな膨張と収縮が発生し、電池寿命に影響を与えるという課題がある。
同社の説明員は「当社が開発を進めているシリコン負極材で採用しているナノシリコンは、粒子が小さいため、リチウムイオン電池の充放電で生じる膨張と収縮を、粒子間の空間などで吸収できる余地がある」と語った。
また、実用化に向けたカギとして造粒の技術力向上を挙げている。「ナノサイズの細かい粉末は、ハンドリング(取り扱い)が難しく、望まない凝集が発生してしまう。造粒で粒子の分布をコントロールすることで、取り扱いやすい2次粒子にしていきたい」(同社の説明員)。
加えて、同社の優位性として、同社の説明員は「ハロイサイトからナノシリコンを抽出する技術やノウハウに他社にはない強みがある」と述べた。
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