清掃ロボットを完全内製化したアイリスオーヤマ、AIとの融合でさらなる進化へ:ロボット開発クローズアップ(4/4 ページ)
アイリスオーヤマがハードウェア/ソフトウェアともに完全内製化した法人向け集じん清掃ロボット「JILBY」を発表。完全子会社のシンクロボがソフトウェアを開発し、ハードウェアはアイリスオーヤマの大連工場で製造する。
プラットフォーム活用でロボット導入の課題を乗り越える
アイリスオーヤマとNTT西日本の連携の詳細は、アイリスオーヤマ 執行役員 ロボティクス事業部 事業部長の吉田豊氏が説明した。
吉田氏は「営業活動の中で大きな課題が2つあると考えた。1つは、導入施設の環境がロボットフレンドリーではないこと。導入環境の整備が遅れている。もう1つは、コストとパフォーマンスの両立。1日2時間、ロボットが稼働できれば損益分岐点を超える。ロボットの稼働時間が伸びれば生産性は良くなるが、フロア間の移動に人手を使ったりすると稼働率が下がる。これらの課題を解決するのがAIとロボット、プラットフォームの融合だと考えている」と語る。なお、JILBYは、ロボットフレンドリー施設推進機構が策定した、ロボットとエレベーター間の連携インタフェース定義であるRFA規格には現時点では対応していないものの、対応も視野に入れているとのことだった。
そして吉田氏は、「フィジカルAIの実現により生産性の飛躍的向上が可能になる。清掃ロボット以外にもさまざまな業態にロボットを提供し、稼働データを吸い上げることで、適切な作業工程をご提案できるようになる。数千台のロボットを一元管理できるようにすることで生産性を大きく改善できる」と強調する。
AIエージェント機能については、スマートフォンを使って遠隔地への清掃指示ができるようになったり、ロボット側からのメンテナンスの事前通知、稼働データを活用した最適な清掃仕様の提案できたりといった機能が今回のJILBYには搭載されており、「日々進化していく」(吉田氏)という。
吉田氏は「多様な業界で顕在化している人手不足に対して対応し、プラットフォームの精度を2社で改善していけば社会をより進化させていけるのではないか。より多くの価値を届けていけるようになる」と意気込む。
清掃ロボットの普及は「まだ初期段階」
大山氏は、清掃ロボットの普及状況について「まだ初期段階で、小売店でも10%前後。需要はまだ大きくなる。新しい機能を追加してさらに市場を拡大していきたい。対話型やエレベーター連携などができればと考えている。ソリューションがあればオフィスや商業施設にも広がっていく。ビルメンテナンス業界にとっても大きなフックとなるだろう。JILBYの新機能は業界にマッチするだろう」と説明する。また、今後のロボットについてはビルメンテナンス業界に関連する産業において研究開発を進めており「2026年には新しいサービス展開を発表できるのではないか」(大山氏)という。
なお、産業用ロボット市場については直近での参入は否定した「われわれは製造業なので産業用ロボットを使いこなしており、将来的な事業化はあり得る。ヒューマノイドの実装もこれから進むだろうが、今のところ事業化の段階にはないと考えている」(大山氏)。
JILBYのデモンストレーション
会見では、アイリスオーヤマ ロボティクス事業部事業推進部 部長の佐藤貴英氏と、NTT西日本とAIロボティクスプラットフォームを共同開発したスタートアップugo CEOの松井健氏によるJILBYのデモンストレーションも披露された。
JILBYが指示に合わせて清掃を行う中、途中で汚れがひどい点を発見する。そこでAIエージェント機能により「もう一度、念入りに清掃しましょう」といった提案を行ってくる。再度清掃してきれいにした後は「毎回同じポイントにごみが残ってしまう場合は、清掃ルートを調整するのがおすすめ」という提案もしていた。
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