次世代半導体基板向けの“柱”の開発順調、太陽HDが新施設で絶縁材料を進化:素材/化学インタビュー(3/3 ページ)
太陽ホールディングスは、2025〜2030年を対象とした新中期経営計画で、コア事業であるソルダーレジストインキの全方位的な成長に加え、次世代の利益の柱となる新規事業創出を加速するとした。本稿ではこれを踏まえて、同社のエレクトロニクス事業で中核を担う太陽インキ製造 取締役/技術開発センター長の宮部英和氏へのインタビューを通じ、同事業の取り組みを深掘りする。
InnoValleyではアイデアを創出しやすい環境を構築
層間絶縁材や感光性カバーレイ、ガラスコア基板用部材、2.5Dインターポーザ用部材などの新製品やソルダーレジストの開発は主に、太陽ホールディングス嵐山事業所(埼玉県嵐山町)内の技術開発センター「InnoValley(イノヴァリー)」で行っている。
InnoValleyは、エレクトロニクス事業の中核企業である太陽インキ製造の技術開発の強化を目的に開設された施設で、地上6階建てで延べ床面積は1万400m2、敷地面積は1万6323m2となっている。同施設は低層(1〜3階)にラボエリアが、高層(4〜6階)にオフィスエリアが配置されている。
「太陽インキ製造の技術開発体制は、ソルダーレジストを対象としたチーム、その他基板周辺材料を扱うチーム、要素技術をターゲットとしたチームから成る。要素技術の開発チームでは、新しい化合物を開発したり、新しい反応を用いたメカニズムの絶縁膜を作る技術を開発したりするだけでなく、ドライフィルムタイプのソルダーレジストに向けて塗工技術の開発も行っている。エレクトロニクス事業では研究開発の効率化に向けマテリアルズインフォマティクスのプラットフォームも開発中だ。このプラットフォームを用いて、将来、分子設計やソルダーレジストの組成の検証が行える体制の構築を目指している」(宮部氏)
また、InnoValleyでは従業員が働きやすい環境の構築にも注力しているという。「技術を発展させ、次世代の製品を開発していくには従業員のアイデアの活用が必要となる。そのため、従業員が働きやすい環境を目指し、嵐山事業所内には保育施設『たいよう保育所』が設置されている他、手ごろな価格でランチやディナーを楽しめる『嵐山食堂』も併設されている。加えて、InnoValleyのオフィスエリアは、おしゃれな内装を採用しているだけでなく、働く場所を自由に選べるABWエリアや、個人作業、打ち合わせ、リフレッシュが行えるスペースも用意し、従業員が自由に発想しやすい環境づくりに努めている」(宮部氏)。
太陽インキ製造の本社で、主力製品として液状のソルダーレジストを扱う埼玉工場(埼玉県嵐山町)でも、より働きやすい環境の構築を目的に事務棟の改修を進めている他、製造ラインにおいても手作業を減らすべく、自動化を推進している。
エレクトロニクス事業では現在、2026年の稼働に向け、ドライフィルムタイプのソルダーレジストの製造で必要な生産技術の開発を行う施設の建設を埼玉県鶴ヶ島市で進めている。
今後の展開に関して、宮部氏は「太陽インキ製造では、業界に先駆けてドライフィルムタイプのソルダーレジストを2000年代に開発した。しかし、本格的に採用が広がったのは2010年代だ。現在はドライフィルムタイプのソルダーレジストがエレクトロニクス事業の営業利益をけん引している。そうした経験も踏まえ、エレクトロニクス事業では今後も、認知拡大に時間がかかっても柱となるような新製品を戦略的に開発していく」と明かした。
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