太陽ホールディングスが開発を進める、半導体向け高解像度感光性絶縁材料の性能とは?:材料技術
本稿では、太陽ホールディングスが開発中の高解像度感光性絶縁材料について、講演「半導体の三次元積層に向けたRDL(再配線層)材料について」を通して紹介する。
太陽ホールディングスは2024年6月6日、東京エレクトロンと共催したセミナー「急拡大する生成AIと、需要高まる半導体」において「半導体の三次元積層に向けたRDL(再配線層)材料について」と題した講演を行った。
8インチウエハープロセスでの検証は達成
太陽ホールディングスは、エレクトロニクス事業、医療・医薬品事業、ICT&S事業を展開している。中でも中核事業のエレクロニクス事業ではプリント基板(PCB)用のソルダーレジスト(SR)で世界シェア1位を獲得。PCB向けの製品としては、表面保護や絶縁などの用途で利用するフレキシブル基板用SR、汎用品/高機能品リジット基板用SR、半導体パッケージ(PKG)基板用SR、穴埋め/層間絶縁などの用途で使うビルドアップ(BU)用部材を展開している。
SRの開発で培った技術を応用し製造した感光性カバーレイや導電性/磁性材料、ディスプレイ用部材(白/黒)も同社は販売している。
一方、近年はさまざま半導体メーカーなどが、半導体の高機能化を目的とし3次元積層に向けRDLの微細化の研究開発を加速している他、RDLの微細化を達成するため高解像度感光性絶縁材料を求めている。そこで、太陽ホールディングスは2022年に、研究本部内に三次元実装材料プロジェクトを立ち上げ、ウエハーレベルに対応した新たな高解像度感光性絶縁材料の研究開発を進めている。
開発を進めている高解像度感光性絶縁材料は、感光性はネガ型で、露光波長はi-line(入り=365)、現像液は濃度が2.38%の水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)、キュア温度は1時間当たり200℃。解像度に関しては、配線の幅と隣り合う配線同士の間隔を指すラインアンドスペース(L/S)で0.7/0.7μm、厚さ2.6μmを実現している。「この高解像度感光性絶縁材料は、東京エレクトロン製のコータ/デベロッパ『CLEAN TRACK LITHIUS Pro』など、市販されている通常のコータ/デベロッパで使える」と太陽ホールディングス 研究本部三次元実装材料PJリーダーの緒方寿幸氏は言う。
同社は性能を確かめるために8インチウエハープロセスにこの高解像度感光性絶縁材料を適用し信頼性試験を行った。信頼性試験は、L/Sで1/1μm、温度は130℃、相対湿度は85%、電圧は1.7Vの条件で実施した。その結果、同社の高解像度感光性絶縁材料が8インチウエハープロセスで利用できる性能を持つことを確かめた。
今後は、12インチウェハープロセスでこの高解像度感光性絶縁材料の信頼性試験を行い、性能を検証する予定だ。緒方氏は「この高解像度感光性絶縁材料を2026年にサンプル出荷あるいは上市したい。現状は研究開発レベルでプロダクトアウト感が強い。そのため、2024年はこの製品を訴求し、顧客の要求にミートさせていきたい」と語った。また、同社は現在、ベルギーの半導体研究機関imecの3Dプログラムへ参加し、RDLの微細化技術の共同開発にも着手している。
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