次世代半導体基板向けの“柱”の開発順調、太陽HDが新施設で絶縁材料を進化:素材/化学インタビュー(2/3 ページ)
太陽ホールディングスは、2025〜2030年を対象とした新中期経営計画で、コア事業であるソルダーレジストインキの全方位的な成長に加え、次世代の利益の柱となる新規事業創出を加速するとした。本稿ではこれを踏まえて、同社のエレクトロニクス事業で中核を担う太陽インキ製造 取締役/技術開発センター長の宮部英和氏へのインタビューを通じ、同事業の取り組みを深掘りする。
ガラスコア基板用部材の開発を推進
「迅速な新製品上市の継続」では、層間絶縁材や感光性カバーレイ、ガラスコア基板用部材、2.5Dインターポーザ用部材などの開発を進めている。
2.5Dインターポーザでは、構造や実装方法が多数存在しており、構造次第で太陽インキ製造のインターポーザ再配線用絶縁材やソルダーレジストが使用されることを見込んでいる。
宮部氏は「ガラスコア基板は従来基板の課題を克服できる有望な技術の一つと考えている。当社では関連企業でパートナーシップを結んだ半導体メーカーとともにオーバーコート用のソルダーレジストをはじめとした絶縁材料の開発を推進しており、既に試作品は評価段階に入っている。2030年までに同製品の採用を目指して今後も開発を強化していく」とコメントした。
最近開発が完了した新製品には、2025年5月20日に本格的な量産開始を発表したパワー半導体向けの放熱ペースト材料「HSP-10 HC3W」がある。
同製品は、熱伝導材料「サーマルインタフェースマテリアル(TIM)材」として開発されたもので、上から順にヒートシンク、TIM材(HSP-10 HC3W)、基板、パワー半導体から成る「熱がこもらない構造」で利用する。この構造は、パワー半導体から発生した熱が、はんだ、スルーホールへと伝達され、ヒートシンクにより排熱される。部品搭載数の少ない基板の裏面にヒートシンクを設けることで、ヒートシンクの大型化、より効率の高い排熱効果が期待できる。
さらに、従来のTIM材は基板1つずつに専用の装置などで塗られていたが、HSP-10 HC3Wはスクリーン印刷で複数の基板にまとめて塗工できるため、プロセスコストを減らせる。これらの他に、「無溶剤」「熱硬化性樹脂」「高い絶縁破壊電圧」といった利点も備えている。
宮部氏は「HSP-10 HC3Wは2026年の年明けに本格量産を開始する予定で、現在は生産体制の構築を進めている。引き合いも得ており、同製品の使用を予定している大手メーカーもおり順調だ。特に評価されている点は、HSP-10 HC3Wの特性と、基板メーカーがスクリーン印刷で複数の基板にまとめて塗工可能なことだ。これにより、基板メーカーで、放熱という付加価値を付けた基板を製造できる」と説明した。
「用途展開の推進」に関しては、ソルダーレジストの開発などで培った技術を生かし、センサーや微小電気機械システム(MEMS)用の材料、高周波化に対応する部材といった電子部品の開発を進めるとともに、同技術を半導体プロセス材料用途にも展開する。
「ソルダーレジストで培った技術は将来、基板の絶縁保護膜としてだけではなく、基板に搭載される電子部品にも広く活用できるようになるだろう。例えば、積層チップインダクターなどの高性能なインダクターは、微細加工が必要な多くのチップが重ねられる。こういった多くのチップが積層されるということは、絶縁性があり、かつ薄い絶縁膜が求められる。これらのニーズに応える絶縁材料を開発することで、余計な部材を削減し、高性能インダクターの構造をより効率的にできる可能性がある」(宮部氏)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.


