日立は世界トップのフィジカルAIの使い手へ、「HMAX」は2030年度までに2万件受注:人工知能ニュース(2/2 ページ)
日立製作所はフィジカルAIを中心とした同社のAI戦略アップデートの方向性について説明。フィジカルAIの適用を自社内で先行的に進めることで「世界トップのフィジカルAIの使い手」を目指す。
「HMAXインダストリー」は社内で既に稼働中
フィジカルAIへの注力を表明した日立だが、AIエージェントについてもさまざまな開発実績があり、日立グループ内の経営やバックオフィス、開発や生産の現場などで200種類以上のAIエージェントが実稼働しているという。
オープンソースのAIプラットフォーム「HuggingFace」に登録されていたAIモデルは2022年に200〜300程度だった。しかし2024年には2万〜3万となり、2025年は数え方にもよるが100万まで増えている。日立 執行役常務 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット 事業主幹/Vice President AI Strategyの黒川亮氏は「まさにカンブリア爆発ともいえるような状況だ。これらを基に、今までIT化されてこなかったロングテールの作業もAIエージェントもされるなどさらに爆発的に増えていくだろう。同じ職種でも一人一人の働き方が異なるように、AIエージェントも役割に応じてさまざまなものが必要になる。少なくとも10万種のAIエージェントが求められる世界を想定している」と述べる。
なお、日立グループにおけるAIエージェントの適用は、業務改革効果の高い間接部門からスタートしている。全社AIエージェント統括部門が要件を束ねて、GlobalLogicを中心としたエージェント開発サービスがアジャイルにAIエージェントを開発し、日立デジタルサービスがその運用管理を担いセキュリティとガバナンスを確保するという体制だ。2025年4月からは、この開発と運用の体制を基にAIエージェントの外販もスタートしている。
また、CIセクター傘下の日立パワーソリューションズにおけるAIエージェントの開発事例を紹介した。日立パワーソリューションズは、保守作業前後の画像比較による原状復帰合否判定について、Google CloudのマルチモーダルAIプラットフォーム「Gemini Enterprise」を用いて試作開発に成功したという。ゲストとして登壇したグーグル・クラウド・ジャパン 上級執行役員 カスタマーエンジニアリング担当の小池裕幸氏は「現場作業員の確認作業をAIで再現したもので、ローコード/ノーコードによる短期開発を実現した」と説明する。
なお、CIセクターが手掛けるHMAXである「HMAXインダストリー」としては、この日立パワーソリューションズの原状復帰合否判定に加えて、日立ビルシステムのビル/ファシリティ管理向けなどで既に稼働中だという。
HMAXは、顧客向けにサービスを展開しているモビリティセクターのHMAXの他、既にHMAXインダストリーが稼働しており、今後はエナジーセクター向けの「HMAXエナジー」の展開も始まる予定だ。ハードウェア製品との連携が前提となるイメージの強いHMAXだが、同じミッションクリティカル分野として金融/公共向けにも展開していく方針である。
2025年9月時点でのHMAXの受注件数はモビリティセクター向けで50件となっている。2027年度までにはHMAXインダストリーとHMAXエナジーへの展開が進み、潜在案件パイプラインは1000件まで拡大する見込み。そして2030年度までには、3セクターでの展開が拡大するとともに金融/公共が加わり潜在案件パイプラインが2万件に達するという見立てである。
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