NTT-ATが開発したPFASフリーの次世代撥水材料、透明度もアップ:材料技術
長年産業界で広く利用されてきたフッ素化合物(PFAS)は、その環境残留性が国際的な問題となり、規制の議論が加速している。そうした中、NTTアドバンステクノロジは、撥水性能を維持したまま、フッ素化合物を一切含まない撥水材料「HIREC(ハイレック)」を開発した。
NTTアドバンステクノロジ(NTT-AT)は2025年10月9日、撥水性などの性能を維持したままで、フッ素化合物を含まない撥水材料「HIREC(ハイレック)」の開発に成功したと発表した。
HIRECは、接触角150度以上の撥水性能と長期安定性を兼ね備えており、雨、雪、氷の付着を防ぐ安全/保守用として、通信、インフラ、芸術といったさまざまな分野で幅広く利用されている。
なお、従来品も、残留性有機汚染物質(POPs)に関するストックホルム条約「POPs条約」で規制対象となっているペルフルオロオクタン酸(PFOA)とPFOA関連物質やペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、PFOAおよびPFOSの塩といった「特定PFAS」を含んでいない。
手軽に使えるエアゾールタイプも開発中
PFASは、化学的安定性や優れた疎水性を示すなどの理由から多くの産業で重要視され幅広く利用されているが、昨今、自然界や人体への長期残留が懸念され、国際的に規制の議論が進んでいる。
そこでNTT-ATは、従来品と同等の撥水性を維持しつつ、PFASを一切含まない非フッ素の撥水材料として新たなHIRECを開発した。新製品は、従来のHIRECと比べて可視光透過率が約5%から約40%へ向上しており、適用分野の拡大を見込んでいる。
新製品の種類は「保管や輸送などで取り扱いが容易な水系」と「速乾性と耐久性に優れた溶剤系」となる。さらに、「手軽に使えるエアゾールタイプ」の開発も進めている。2025年11月中に水系と溶剤系の開発品を発売する予定だ。
今後NTT-ATは引き続き、大気汚れの付着による撥水性低下を抑える独自の防汚機能(セルフクリーニング機能)を有した従来のHIRECの供給も継続しながら、顧客のニーズを踏まえて、開発を進めラインアップの拡充を図っていく。
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