JX金属が磯原工場のInP基板生産能力を5割増強へ、光通信需要の急増に対応:工場ニュース
生成AIの進化により、さまざまな国でデータセンターの建設ラッシュが起きている。低消費電力で高速大容量のデータ伝送が行える光通信技術の重要材料であるインジウムリン(InP)基板の需要が急増している。これを受け、JX金属は、InP基板の生産拠点である磯原工場で、立て続けの設備投資を決定した。
JX金属は2025年10月8日、光通信分野を中心に需要が急増している結晶材料であるインジウムリン(以下、InP)基板の生産能力をさらに強化するため、設備投資を実施することを決定したと発表した。
同製品の生産拠点である磯原工場(茨城県北茨城市)で製造工程の一部を増強する。今回の増強と2025年7月23日に発表した「結晶材料の増産に向けた設備投資(固定資産の取得)」とを合わせて、同工場の生産能力は現在と比べて約5割増となる。今回分の投資額は約33億円で、新設備の稼働は2027年度を予定している。なお、2026年3月期連結業績への影響は軽微の見通しだ。
データセンターの建設ラッシュや光通信の利用増加を背景に
近年、生成AI(人工知能)の急速な進化を背景に、ハイパースケールデータセンターの建設が世界的に加速しており、今後も市場のさらなる拡大が見込まれている。これに伴い、データセンターにおけるデータ伝送量は急増しており、それに比例して消費電力も増加している。
こうした状況を受け、従来の電気信号による通信に代わり、より高速かつ大容量のデータ伝送が可能で、消費電力の低減にも貢献する光通信への移行が加速している。この光通信を支える重要な材料の1つがInPだ。InPは、電気信号と光信号を相互に変換できる特性を持ち、光通信の受発光素子をはじめ、ウェアラブル端末における近接センサーや産業用イメージセンサーなど、幅広い分野で用いられる高機能デバイスの製造に必要な先端材料だ。
データセンターの建設ラッシュや光通信の利用増加を背景に、受発光素子を用いる光トランシーバーの需要が特に高まっている。さらに、次世代の情報通信基盤技術として開発が進められている光電融合技術でもInPの採用が見込まれており、データセンター間通信のみならず、基板間、チップ間での活用も期待されている。
JX金属では、InPの需要拡大に対応すべく、2025年7月に磯原工場への設備投資を決定した。加えて、生成AIの進化が今後も継続すると予想される中、InP基板の中長期的な需要急伸に対応する体制の構築が急務であると判断し、追加の設備投資を決めた。
なお、InP基板の将来的な需要増大は継続すると見込まれており、今後の投資についても引き続き検討していく。
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