InP基板を増産へ JX金属が15億円の設備投資を実施:工場ニュース
JX金属は光通信に欠かせないInP基板の増産に向けた設備投資を実施。約15億円の投資を行い、生産能力の向上を目指す。
JX金属は2025年7月23日、光通信に必要な結晶材料であるInP(インジウムリン)基板の増産に向けた設備投資を決定したと発表した。現行の生産能力と比べて約2割アップを目指して約15億円の投資を行い、2026年度に設備の稼働開始を目指す。
この設備投資は、近年増加しているInP基板のニーズに対応する目的で、磯原工場(茨城県北茨城市)における製造工程の一部を増強するために行う。
InP基板は光通信において、電気信号を光に変換する発光素子や光ファイバーを通し、受信した光信号を電気信号に変える受光素子に使用され、高いデータ伝送速度と低損失を可能にする。高速インターネットをはじめとする基幹光通信網や光通信の受発光素子、ウェアラブル端末における近接センサー、産業用イメージセンサーなど幅広い分野で活用されている高機能な化合物半導体材料である。
現在、急成長している生成 AI(人工知能) の学習や推論には大量かつ高速のデータ処理能力が必要であり、その発展を支えるためにハイパースケールデータセンター内で大量のデータを扱える光通信が多く用いられるようになっている。そのため、JX金属のInP基板の需要も増加している。
また、生成AIや次々世代通信、自動運転、医療、エンターテインメントなどのリアルタイム性が求められるアプリケーション分野の発展を実現するために、InP基板を用いた次世代の情報通信基盤技術として「光電融合技術」の開発が進められている。
JX金属は、2019年に策定した「JX金属グループ 2040 年長期ビジョン」において、半導体材料や情報通信材料といった先端素材分野を取り扱う「フォーカス事業」を今後の成長戦略のコアと位置付けている。同事業のさらなる拡大に向けて、InP基板の将来的な需要の増大を見据え、さらなる投資についても検討していく。
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