木質バイオマス燃焼灰改質リサイクルシステムの構築:木質バイオマス燃焼灰資源化技術の実証開発(2)(2/2 ページ)
本取り組みは、環境再生保全機構「令和3年度環境研究総合推進費 ジオポリマーコンクリートに資する木質バイオマス燃焼灰の資源化技術の実証開発(JPMEERF2021G03)」で実施した内容の一部である。第2回目では、北九州市立大学と日本アイリッヒの研究グループの研究内容を紹介する。
2.パイロットプラントの設計/製作および能力検証
製作したパイロットプラント(計画処理量300t/年)の仕様を表2、外観を写真4に示す。図2にパイロットプラントの性能検証結果を示す。
評価試験において、本プラントが目標の300t/年(150kg/h、250日/年×8h/日)の処理能力を有していることを確認した。特に連続式に改良した浮選処理プロセスにおいては、濃度12wt%の燃焼灰スラリーを25L/minの速度で投入する運転条件で、MCASの未燃炭素量(3.0%以下)およびニュートン効率(0.60以上)の目標を満足し、パイロットプラントは360t/年の処理量を達成できることを確かめた。
さらに、運転条件を最適化して24時間運転を可能にする仕様とすると、最大1080トン(t)/年の処理効率を達成できる可能性を示した。その処理費は燃焼灰1t当たり7858円と試算され、目標(8000円/t)を2%減で達成した(2023年度)。
3.連続式実機プラントの設計
パイロットプラント(300t/年)の試験結果および試験運転で示された課題や課題解決の手掛かりを基に、1ライン当たり3000t/年の実機の設計原案を作成した。事前撹拌プロセスには燃焼灰、水、添加剤の計量投入の自動化や、スラリー化の完全自動化が、実機化の課題としてあり、これに対応したシステムとする。
浮遊選鉱プロセスは、前後の事前撹拌プロセスと脱水濃縮システムの処理能力を考慮するとともに配管洗浄システムと各槽のレベル制御により、連続浮遊選鉱運転が担保できるシステムとする。
その他、タンク形状などの課題を詳細に抽出してそれを改善した実機プラントとする。当初、9000t/年の実機装置スペックを設定したが、その後の調査で木質バイオマス発電ボイラーは5MW級が主力となっていることが判明し、それらのボイラーの燃焼灰排出量は約500t/年である。今回開発したパイロットプラントを24時間連続運転に更新すれば、5MWボイラー級の実機プラントにすることが可能である。
4.改質木質バイオマス燃焼灰製品評価
木質バイオマス燃焼灰から製造されたMCASを混合したセメントコンクリートの圧縮強度試験、静弾性係数および乾燥収縮ひずみを図3に示す(NNはMCAS無混合の基準供試体)。
一般的な混和材である石炭由来のフライアッシュと同様に、バイオマス由来のMCASも長期材齢でポゾラン活性を示すことが確認された。静弾性係数は、New-RC式によって圧縮強度から予測される値より全体的に高い側に分布した。3種類のMCAS(B灰、C灰、D灰)を混合することで乾燥収縮ひずみが増加しており、収縮低減剤の併用などのひび割れ対策が必要といえる。
次回は、改質木質バイオマス燃焼灰を活性フィラーとしたジオポリマーコンクリートの開発に関して、西松建設 マイスターの原田耕司氏をサブテーマリーダーとした同社の研究グループと、九州工業大学大学院 准教授の故 合田寛基氏の研究グループが共同で行った研究の内容を紹介する。
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