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木質バイオマス燃焼灰改質リサイクルシステムの構築木質バイオマス燃焼灰資源化技術の実証開発(2)(1/2 ページ)

本取り組みは、環境再生保全機構「令和3年度環境研究総合推進費 ジオポリマーコンクリートに資する木質バイオマス燃焼灰の資源化技術の実証開発(JPMEERF2021G03)」で実施した内容の一部である。第2回目では、北九州市立大学と日本アイリッヒの研究グループの研究内容を紹介する。

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 木質バイオマス燃焼灰をジオポリマーコンクリートの活性フィラーとして使用するには、コンクリートの流動性や強度発現に悪影響を及ぼすので未燃炭素含有量を3%以下にするとともに大量使用に伴い重金属などを低減させておく必要がある。

 ジオポリマーとはアルミナシリカ粉末とアルカリシリカ溶液から生成される非晶質ポリマーの総称である。コンクリートの主原料であるセメントは製造工程で大量のCO2を排出するため、ジオポリマーはセメント代替として期待される材料である。

 木質バイオマス燃焼灰は原料の1つである活性フィラー(アルミナシリカ粉末)として利用することができる。しかし、一部の木質バイオマス燃焼灰の未燃炭素含有量は3%を大きく超え重金属溶出量も環境基準を超過しているものがあり、それらの多くは産廃処理されている。

 そこで、北九州市立大学と日本アイリッヒの研究グループは、石炭を混焼した混焼灰と木質バイオマス専焼の専焼灰を選択し、木質バイオマス燃焼灰の未燃炭素と重金属を除去する連続式改質装置を開発して、既存のラボ装置の10倍の製造量(150kg/h)を有するパイロット装置として実用可能性を検証した。

1.連続式浮遊選鉱装置の開発

 浮遊選鉱プロセスの検討に関して、2.3Lの小型(写真1)および相似形で2倍(体積8倍)にスケールアップをした中型(18L)(写真2)のプロトタイプ装置で実験を行った。

写真1 2.3Lの小型浮選装置(左)/写真2 18l中型浮選装置(右)
写真1 2.3Lの小型浮選装置(左)/写真2 18l中型浮選装置(右)[クリックで拡大]
図1 プロトタイプ装置における実験結果
図1 プロトタイプ装置における実験結果[クリックで拡大]

 プロトタイプ装置のニュートン効率は、図1に示す通り、水槽形状や運転条件の見直しを繰り返すことで0.70を超えるまで向上した。改質木質バイオマス燃焼灰(MCAS)の強熱減量は、最終的に選定された水槽形状で1.9〜2.7%の範囲にあり、製品品質も問題ないことが伺えた。実験を通じて装置形状に関する以下の知見を得た。

(1)(1)マイクロバブル(MB)ノズルを水槽の中に沈めて取り付けることで全般的に安定した分離処理が可能になった。この場合、MCASは水槽の一番下から取り出すことになる

(2)フロスとして分離したい比較的軽い成分は、MBとともに、MBノズルから吐き出される上昇流に乗ってフロス溢出口付近にまで到達して滞留する。MBノズル吐出口からフロス溢出口の間の水槽の中心に流れを妨げるものを設けるとMCASの強熱減量が悪化した

(3)MCASとして取り出したい比較的重い成分は、MBと結び付かないため、装置の外周付近を下降する。このため、MCASは水槽下部の外周もしくは一番下から取り出すことになる。また、水槽内で下降する成分を選別するための内底を設けることで分離能力が向上した

(4)分離能力が最適となる、MBノズル吐出口からフロス溢出口までの距離(小型では約300mm、中型では約600mm)が認められた

(5)水槽内に投入された原料が直ちにMBにさらされるよう、原料を水槽の水平断面の中心から投入することで良好な処理効率が得られた

(6)循環ポンプへの吸込口の取り付け位置は、内底より上の水槽の外周から中心に向かって水槽内径の6分の1離れた場所、もしくは内底より下のMBノズルの直下の2種類で効率よく処理することができた

(7)MBノズルによって生じる水槽内の渦流を積極的に消失/強化しても処理効率は向上しなかった

 事前撹拌プロセスの検討に関して、ラボ装置に併設された事前撹拌ミキサ(アイリッヒ インテンシブミキサー:R02)を用いて、事前攪拌時間、薬剤添加率および薬剤添加方法について検討し、ラボ装置の実績を基にパイロットプラントの事前撹拌プロセスの装置(ミキサ)の仕様を選定した。事前撹拌装置の仕様と写真を表1、写真3に示す。

表1 プロトタイプ装置における実験結果
表1 プロトタイプ装置における実験結果[クリックで拡大]
写真3 事前撹拌装置
写真3 事前撹拌装置[クリックで拡大]

 脱水プロセスの検討について、脱水後のスラリー濃度の目標は、石炭灰の実績である75wt%としていたが、濃度10wt%のスラリーを6〜8L/minの流量でデカンタ式遠心脱水機に投入しても、得られた脱水ケーキの濃度は68.5wt%(目標の91%)にとどまった。脱水ケーキは硬い粘土状となっており、装置の機構上限界の濃度に達したと考えられる。脱水、省エネおよび経済性の観点から、70wt%を超える濃度まで脱水するのではなく、今回得られた限界の濃度である70wt%弱程度のMCASの濃度を前提にジオポリマーコンクリート製造時の配(調)合の検討が必要となった。

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