純国産バイオジェット燃料製造技術でSAFの生産に成功、Annex2の全項目で基準を達成:材料技術(1/2 ページ)
環境エネルギー、北九州市立大学、HiBD研究所は、国産特許技術「HiJET」により持続可能な航空燃料の国際規格「ASTM D7566」の「Annex2」に適合したバイオジェット燃料の製造にラボベースで成功した。
環境エネルギー、北九州市立大学、HiBD研究所は2023年6月7日、オンラインで会見を開き、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「新エネルギー等のシーズ発掘・事業化に向けた技術研究開発事業」で、国産特許技術「HiJET」により持続可能な航空燃料(SAF)の国際規格「ASTM D7566」の「Annex2」に適合したバイオジェット燃料の製造にラボベースで成功したと発表した。
国内の企業や大学などがAnnex2準拠のバイオジェット燃料を製造するのは初めてだという。適合した規格であるASTM D7566は、国際的な標準化/規格設定機関であるASTM Internationalが定める「代替ジェット燃料等合成燃料」を含む航空用ジェット燃料に関する国際規格だ。この中でAnnex2は特に廃食用油や植物油などの脂肪酸エステルの水素化により燃料を製造する技術に関する規格となる。
副産物としてバイオディーゼルとバイオナフサも生産
HiJET技術は、化石燃料から製造するジェット燃料と同様の化合物で構成されたバイオジェット燃料を廃食用油など動植物性油脂から作る。特許を取得したHiBD装置(脱酸素)により原料の廃食用油から炭化水素油を取り出し、この炭化水素粗油に水素化処理を行いSAFを生産する。
生産で課題となったは、水素化処理で油脂の中の酸素原子を除去しながら、炭化水素の芳香族化を防止した上で、航空機が飛ぶ氷点下の環境でも凍らないように異性化させて流動性を上げることだった。解決策として、改良したセラミックス系の触媒とプロセスによって、従来と比較して芳香族の生成を80%以上抑え、析出点を−65℃以下とし、かつ芳香族炭化水素濃度0.05%未満という燃料の製造に成功し、バイオジェット燃料の国際規格であるAnnex2の全項目で基準を達成した。
環境エネルギー 代表取締役 野田修嗣氏は「Annex2の基準を満たした従来技術の高圧水素化処理では、水素化処理圧力が5M〜10Mpaと高く、装置の大きさやイニシャルコスト、ランニングコスト(水素消費量)も大きかった。一方、HiJET技術は、水素化処理圧力が3MPa以下と低圧力で、装置の大きさやイニシャルコスト、水素消費量も小さい」と利点を語った。
加えて、SAF製造時に生成される油(ガス留分を含む)は、バイオジェット燃料、バイオディーゼル、バイオナフサと全て付加価値の高い生成油として販売できる。
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