ティアフォーの自動運転とAIを支える「高火力」なGPUサーバ:自動運転技術(2/2 ページ)
自動運転開発の“総合商社”を目指すティアフォー。AIの先端技術を活用しながら、各地で自動運転車を走らせるだけでなく、自動運転AIのデータ駆動型開発の実現も目指している。ただ、学習や推論でAIを進化させるには、開発を支えるGPUサーバの「火力」も重要だ。
自動運転開発とAI
開発側は、走行中の車両のデータを収集し続け、必要に応じて追加学習でトレーニングを行う。テストを経て、安全が確認されればOTAなどでシステムを更新する。このサイクルを回しながら自動運転車を進化させ続ける。
開発のオペレーションの部分にもAIが活用されている。これまでは人間が考え出したシナリオを基に安全性をどのように担保するかを考え、テストで安全性を評価してきた。さらにさまざまなケースで網羅的にテストを実施するには従来のやり方では不足しており、シミュレーター自体をAIで代替するというアプローチも検討されている。
走行して収集してきたデータのバリエーションを増やしていく上でも、晴れの日のデータを雨のデータに変換したり、データの個人情報保護のために匿名化したりといった場面でAIが関わってくる。
ティアフォーが活用する「高火力」
AIを含む車載ソフトウェア自体は低消費電力で動作することが求められるが、事前の学習に使うモデルは大規模になり、AI技術の開発では学習と推論の両面でさくらインターネットの高火力シリーズのようなGPUのサーバが重要になる。複数のAIモデルを組み合わせて使ったり、大量のデータから学習させたりする場面の他、エンドツーエンドAIのようにより高度な認知/判断をさせていく上でも必要だ。
ティアフォーは高火力シリーズを次のように使い分けている。「高火力PHY(ファイ)」はNVIDIAのGPUを搭載した物理サーバを1台提供するサービスで、高速なサーバ間ネットワークを利用して大規模な学習環境を構築できる。「NVIDIA B200」が利用できるプランも提供されている。総計算能力は4.81EFLOPSを達成しており、2028年に3月末までに総計算能力は18.9EFLOPSまで増やす。ティアフォーでは社内で占有的に使いたい用途や、モデルの学習目的が明確なもので安定的に回している。
「高火力VRT(バート)」はNVIDIAのGPUを搭載したサーバを複数のバーチャルマシンに分割して時間単位の料金で提供しており、「NVIDIA H100」を正式版として利用できる。ティアフォーでは、時間貸しのバーチャルマシンという位置付けで小規模な学習などフレキシブルな用途に充てている。セキュリティが求められるパートナーとの共同開発ではリソースコントロールも必要になるためバーチャルマシン型を利用している。
CI/CD(継続的インテグレーションと継続的デリバリー)のパイプラインなど定常的でスペックが求められない用途では、AWSのアーキテクチャを利用したバックシステムを組んでいる。ただ、AWSは日本国内のリソースが逼迫しており、安定的な利用が難しい状況だと判断し、コストパフォーマンスの高いさくらインターネットを選んだ。さくらインターネットは北海道にデータセンターがあり、国内で完結できるところもメリットだ。
また、ティアフォーは、晴れの日のデータを雨のデータにコンバージョンするなどシミュレーター用のデータ生成や、データの匿名化に必要なAIモデルの開発にもさくらインターネットの高火力シリーズを活用している。エンドツーエンドAIのフレームワークやプラットフォームの設計の他、パートナー企業と協力/協調しながらデータ収集やAI開発を行う「Co-MLOps」も推進する。
生成AIの市場規模は2023年度の1416億円から2028年度には1兆7000億円以上に拡大すると見込まれている。さくらインターネットも、NVIDIAと情報交換しながらGPUの性能向上を見極め、データセンターの能力を増強していく。生成AIの需要に対応するため、GPUの段階的な設置とコンテナ型データセンターの構築を進めてきた。GPUクラウドサービスの売り上げも急増している。
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