検索
連載

Armはなぜブランド名を変更するのか、「SME2」投入もAI対応に紆余曲折ありArm最新動向報告(17)(1/3 ページ)

Armの最新動向について報告する本連載。今回は、2025年5月に発表されたブランド変更の狙いや、CSSの提供方法の変更、AI処理を担う「SME2」の投入などについて紹介する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 本連載「Arm最新動向報告」(不定期掲載)で紹介してきたArmの最新動向であるが、2024年のアップデートをしていない間にいろいろと大きな変化が出てきた。最大のものはブランド名の一新であるが、他にも違いがある。この辺りについてまとめてご紹介したい。

⇒連載「Arm最新動向報告」バックナンバー

「Cortex」から20年ぶりのブランド変更

 2025年5月、Armはブランドを一新することを明らかにした。

 もともとArmのプロセッサはARMXX(XX:1〜11)という番号であったが、同社は2004年に「Cortex」という新ブランドを発表し、その後ろにA/R/MというSuffix(添え字)を付けることでApplication/Realtime/Microcontrollerの区分けを行う、という命名規則を発表した。これに基づく最初の製品が、2005年のCortex-A8と2011年のCortex-R4、それと2004年のCortex-M3となる。以後はこのCortexブランドを使い続けてきたわけだが、アプリケーションプロセッサに関してはクライアント(モバイル)向けとサーバ向けが混在するようになり、これを区分けするために2019年に「Neoverse」というブランドを導入した。

 結果から言えばこのCortexとNeoverseのブランド区分けはうまく行っており、当初のコアこそほぼCortex-Aそのものだったが、現在ではだいぶ構造も変わってきた。

 これに加えて自動車向けも本格的に立ち上がってきたが、こちらはさらに複雑でCortex-A/R/Mの全てのコアが利用されるようになり、またゾーン/ドメインアーキテクチャやSDV(ソフトウェアデファインドビークル)に向けて、他の用途とは異なる要求がプロセッサに課せられるようになってきた。このあたりで一度Armとしては、用途別に完全にラインアップを分ける必要があると判断したのだろう。2025年5月に新しく以下の4つのブランドを発表した(図1)。

  • Arm Neoverse(ネオバース):インフラストラクチャ向け
  • Arm Niva(ニーバ):PC向け
  • Arm Lumex(ルメックス):モバイル向け
  • Arm Zena(ジーナ):オートモーティブ向け
  • Arm Orbis(オービス):IoT向け
図1
図1 Armが発表した新たなブランド[クリックで拡大] 出所:Arm

 5つじゃないか? と言われそうだが、Neoverseは従来そのままなのでこれは新ブランドとはいえない。これらメインブランドの下に、さらに世代ごとのナンバリングが行われ、加えてUltra、Premium、Pro、Nano、PicoなどのSuffixがさらに付加されるという形になる。

 ちなみにこれは現時点ではCPUにのみ適用され、GPUはMaliブランドが、NPUはEthosブランドが引き続き利用される(2022年からGPUのブランド名として採用したImmortalisは結果的に消えることになったもよう)が、ナンバリングなどはCPUのブランドに合わされることになった“らしい”。この“らしい”というのは、少なくとも発表時点では詳細が未定になっており、現時点でもまだ確たるナンバリングルールが発表されていないためである。

 この新しいブランド名を利用して最初に発表されたのが自動車向けであり、2025年6月19日にZena CSSがアナウンスされた。

 もっともこの時の発表では、CPUの名前にはまだCortexを利用したものになっており、ZenaはCSS(Compute Sub System)全体の名称にとどまっている(図2)。どうもこの時点ではまだCPU IPの名称を完全に決めきれていなかったらしい。

図2
図2 Zena CSSのIPの構成。まだCPUはCortex-A720AEやCortex-R82AEといった名称のまま。恐らくこの世代のZena CSSはこのままの名称で、変更されるのは第2世代以降になるかと思われる。[クリックで拡大] 出所:Arm

 ただし、モバイル向けの新CSSを2025年9月10日に発表した際には、Lumex CSSに含まれるCPU IPの名称がC1-Ultra/C1-Proになり、またGPUもMali G1-Ultraに変更された(図3)。多分今後は、他のCSSについてもこれに準ずる形でCPU IPの名前が付けられるものと思われる。

図3
図3 Lumex CSSのIPの構成[クリックで拡大] 出所:Arm

 ちなみにこの新しいルールは、現在のNeoverseのものとやや異なっている。2024年2月に発表された第3世代のNeoverseはNeoverse V3/N3/E3となっており(図4)、これが次の第4世代では引き続きNeoverse V4/N4/E4となるのか、それともNeoverse C4 Ultra/Premium/Pro/Nanoになるのかは不明である。

図4
図4 Neoverseの第3世代プロダクトのラインアップ[クリックで拡大] 出所:Arm

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

       | 次のページへ
ページトップに戻る