Armのモバイル向け基盤が全面刷新で「Lumex」に、「SME2」でAI処理性能は5倍:人工知能ニュース(1/2 ページ)
Armがモバイル機器向けプロセッサIPセットの新たな演算サブシステム(CSS)プラットフォーム「Arm Lumex」を発表。CPUやGPUのブランド名を刷新するとともに、CPUクラスタにAIの演算処理を得意とする新たな拡張命令「SME2」を組み込むことでオンデバイスAIの処理性能を大幅に高めた。
Armは2025年9月10日、オンラインで会見を開き、フラグシップスマートフォンやタブレット端末、次世代PCなどのモバイル機器向けプロセッサIPセットの新たな演算サブシステム(CSS)プラットフォーム「Arm Lumex」(以下、Lumex CSS)を発表した。CPUやGPUのブランド名を刷新するとともに、CPUクラスタにAI(人工知能)の演算処理を得意とする新たな拡張命令「SME(Scalable Matrix Extension)2」を組み込むことで、今後のモバイル機器に求められるオンデバイスAIの処理性能を大幅に高めたことが特徴となっている。
Armは、2021年5月発表の「Arm Total Compute Solution(TCS) 21」から2023年5月発表の「TCS23」まで、スマートフォンをはじめとする民生機器向けのプロセッサIPを、CPUとGPU、システムIPをパッケージで提供してきた。2024年5月発表の「Arm CSS for Client(CSS for Client)」は名称が変わったものの、基本コンセプトはTCSから大きく変わってはいなかった。
日本法人のアームで代表取締役社長を務める横山崇幸氏は「2024年にCSS for Clientを発表した際にオンデバイスAIが現実になりつつあると発表したが、それ以降AIの進化が加速しているだけでなくよりパーソナルになっている。今はAIを魔法のように便利に感じでいるが、将来的には最低限の当たり前の機能になるだろう。Armは急速に進化するAIの成長に歩調を合わせるため、AIファーストのAIプラットフォームを展開していく」と語る。
今回のLumex CSSは、2025年5月に5つの主要なエンドマーケットごとに分けて展開することが明かされていたCSSプラットフォームのうちモバイル機器向けで示されていた「Arm Lumex」に当たる。併せて、CPUやGPUなどのIPも、Ultra、Premium、Pro、Nano、Picoなどのパフォーマンス層を示す名称と、プラットフォームの世代に合わせたナンバリングで簡素化すると表明していた。
Lumex CSSそのものは、TCSやCSS for Clientと同様にCPUとGPU、システムIPをパッケージにしている点では変わらないものの、それぞれのIPの性能はこれまでと同様に大幅な性能向上を果たしている。
CPUとGPU、システムIPの命名ルールを刷新した上で性能も向上
まずLumex CSSのCPUは、最高のピーク時性能を持つ「C1-Ultra」をフラグシップとして、C1-Ultraを省面積化しつつサブフラグシップに位置付ける「C1-Premium」、持続的な効率性を特徴とするハイエンドの「C1-Pro」、電力効率と省面積をより追求した「C1-Nano」の4つを用意した。前回発表のCSS for Clientにおいて、プレミアムスマートフォン向けに位置付けていた「Cortex-X925」に対応するのがC1-UltraとC1-Premiumだ。
C1-Ultraの処理性能は、Cortex-X925と比べてシングルスレッド性能で25%以上、IPC(1クロックサイクル当たりに実行される命令数)で2桁%向上している。
これまでArmが展開してきたCPUの「Cortex-Aシリーズ」は、高性能コアと省電力コアを組み合わせるbig.LITTLE構成を基軸としており、CSS for Clientでは高性能コアが「Cortex-A725」、省電力コアが「Cortex-A520」だった。Lumex CSSにおいて、Cortex-A725の後継がC1-Pro、Cortex-A520の後継がC1-Nanoとなる。ただし、プロセッサIPセットとしてLumexの名称を使うには、C1-UltraとC1-Premiumという2つのフラグシップCPUを採用する必要がある。
C1-Proは、キャッシュサブシステムのデータ移動をアップグレードするなどして、Cortex-A725と比べて電力効率を12%以上向上している。
新たなGPUの名称は「Mali G1-Ultra」となった。これまで使用してきたMaliのブランド名は継続しつつCPUと同様に簡素化している。ただし、2022年6月から採用してきたフラグシップGPU向けの「Immortalis(イモータリス)」のブランド名称は使用していない。
Mali G1-Ultraは、CSS for Clientの「Immortalis-G925」と比べてグラフィックス処理性能とAI処理性能が20%向上し、フレーム当たりの消費電力を9%削減した。また、新たなレイトレーシングユニットの採用によりレイトレーシング性能は同2倍に向上している。
なお、システムIPも名称が簡素化され「C1-DSU」となった。
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