テクノロジーを支える電子機器製造、日本企業も標準化活動に参加を:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
国際標準団体IPCを前身とするグローバル・エレクトロニクス・アソシエーションは東京都内でプレスセミナーを開き、標準化活動への参加を呼び掛けた。
国際標準に追い付くのではなく、自分たちを標準にする
プレスセミナーには自民党 半導体戦略推進議員連盟 名誉会長の甘利明氏と、NEC 特別顧問で日本産業標準調査会(JISC) 会長を務める遠藤信博氏も参加して、標準化活動の重要性について語った。
甘利氏は2006〜2007年に経済産業大臣を務めた。2006年11月には国際標準化戦略目標を定め、官民での合意をまとめた。当時の国際標準化戦略では、欧米諸国に比肩できるように2015年までに国際標準の提案件数倍増と、欧米並みの幹事国引受件数の実現を目指した(提案件数はほぼ倍増を達成。幹事国引受数は英仏並みまで増えた)。
甘利氏は標準化の重要性について「良いものが市場を取れるのではなく、市場を取ったものが良いものなのではないか。とはいえ、良いものが標準になるのが望ましく、良いものを標準にしていく努力が求められている。国際標準にいかに早く合わせるかではなく、いかに自分たちを標準にしていくか」と語った。
こうした経験を踏まえて甘利氏は「エレクトロニクスはライフサイクルが短く、技術革新も速い。国家間のすり合わせで標準を決めていくのでは時間がかかりすぎる。グローバル・エレクトロニクス・アソシエーションのように関係者が集まって議論すればスピーディーだ。うまい使い分けが必要だ」と述べた。また、日本では標準化にかかわる人材が20〜40代で不足しており、人材育成も課題だと指摘した。標準化団体に参加することは人材育成にもつながるとしている。
甘利氏は大学卒業後、1972年にソニーに入社している。ベータマックスの1号機が発売される3年前だ。甘利氏は「ソニーはベータマックスが優れていると信じていたが、市場を取ったのはVHSだった。レンタルビデオが繁盛する中でもほとんどがVHSだった。ソフトウェアからハードウェアが決まっていった」と標準化の競争を振り返った。
標準化戦略には展望が必要
遠藤氏は、IP(知的財産)を扱っていく方法の1つが標準化だと説明した。特許は技術のシーズを生かしていく方法で、標準化は市場から見たIPの生かし方であるという。「標準化されるとそれを基にモノを作れるようになり、標準化をベースにすることでコストも下げられる。市場オリエンテッドな方法論で、マーケティングにも共通する。グローバルサウスを中心とする海外で日本がどこまで貢献できるかという点でも標準化が重要になる。標準化をベースに価値を作ることが新興国の成長を支えていく」(遠藤氏)
標準化を推進していく上では、技術者がディスカッションする場が必要だという。「欧州では、EUという市場を共有しているため各企業で標準化への関心が高く、議論がしやすいが、日本は島国なのもあってそういった環境がない。標準化の力を経営陣も意識して、標準化に関わる人材を企業でも育てていく必要がある。CSO(最高標準化責任者)を置く企業も出てきた。標準化に関わる人材の評価が上がってきている」(遠藤氏)。
遠藤氏は標準化には戦略が必要だと訴えた。「技術がどのように発展していくかを踏まえて標準の在り方を議論すべきだ。アプリケーションも含めて将来を話し合えると、持続可能性にもつながっていく。戦略は企業だけでなく国にも求められる。まずは話し合える場が必要だ」(遠藤氏)。
国際標準には、国際機関が決定して法的拘束力のあるデジュールスタンダード、関係者がフォーラムを通じて合意形成するフォーラムスタンダード、大手企業が市場を支配して標準を決めていくデファクトスタンダードがある。甘利氏は標準化の使い分けについて、技術革新のスピードが速いエレクトロニクス産業にはフォーラム標準が向くと説明した。
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